内容説明
「食器だけ作って下せえの。おめさんの食器は日本一使い易いけえ」。みほの熱い励ましで夫啓一は覚悟を決めた。紆余曲折を経ての結論だったが、「日本民藝公募展」に出品した“面取湯呑み”で金賞を受賞。台風被害、火入れの失敗、不渡り手形などの災難を乗り越え、幾工程もの土つくり、蹴りろくろ、薪窯で日用雑器を焼き続ける家族の愛と歴史を力強く描く。
著者等紹介
津村節子[ツムラセツコ]
1928年福井市生まれ。学習院女子短期大学卒業。64年「さい果て」で新潮同人雑誌賞、65年「玩具」で芥川賞、90年『流星雨』で女流文学賞、98年『智恵子飛ぶ』で芸術選奨文部大臣賞、2011年「異郷」で川端康成文学賞を受賞。日本藝術院会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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びす男
57
佐渡島にある旅館の娘・みほが、縁談で陶器職人の元に嫁いでからの奮闘を描く。広い県土と海を背負う新潟にふさわしい、美しくて伸びやかな情景描写がよかった■見合いで出会い、結婚してから芽生えた静かな愛情。「あなたの陶器は日本一なんだから」と夫の啓一を励まし続ける、みほの甲斐甲斐しい姿。「この人と生きていくんだ」という決意を見て、身を狂わせる恋にも劣らぬ熱があるのを感じた■かつての、「耐えるだけ」の女性像。一見すると静かで起伏がないような日々の営みも、巧みな作家がすくい上げると、立派な一編の小説になっている。2020/01/25
三平
14
吉村昭夫人として名前は知っていたが著作は初読み。新潟の貧しい窯元の家族を、佐渡から嫁いできた女性の視点で描いた小説。借金をして薪を買い、焼いた器を売った利益で金を返す自転車操業の年月。モデルになった御家族があるようだが、只々、使う人のことを考える丁寧な仕事が当時活発になってきた民芸運動によって報われ、本当に良かった。吉村氏同様に飾らない実直な筆致が好ましい。夫婦ってどこか似る所があるのかも。もっといい作品があるらしいので、いつか読みたい。2017/01/15
Sosseki
1
佐渡金山、新潟の大雨、焼き物の作り方、新潟の地理等、寄り道も興味深かった。今も4姉妹で仲良く焼き物を続けているようで、跡継ぎもいるようで頼もしい。2016/03/21
石川さん
1
新潟の民芸窯を舞台にした親子三代記を淡々と綴りました的な。派手さはないけど、どうなっちゃうんだろうかと、ページを巡るスピードも早くなります。ほのかな感動が残る物語。2012/02/13
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