出版社内容情報
小津監督は自分の趣味・好みを映画に最大限取り入れた。インテリア、雑貨、俳優の顔かたち、仕草や口調、会話まで。斬新な小津論。
内容説明
小津映画には監督の美意識・趣味が溢れている。ファッション、インテリア、雑貨といった表層的なものから、俳優・女優の顔かたち、仕草や口調や会話の間にいたるまで。原節子、三宅邦子、笠智衆、佐分利信、東野英治郎、斎藤達雄と名を連ねるとおのずと小津映画ムードが湧いてくる。映画評論家の見落としがちな、監督の好嫌の感情に注目した、画期的な小津論。
目次
1章 ファッション、インテリア(ドンゴロスと女たちのきもの;浦野理一のきもの ほか)
2章 女たち、男たち(おじさまごっこ;紀子のくすぐったさ ほか)
3章 セリフ、しぐさ(いわゆる「原節子風」;きわどい綱渡り ほか)
4章 今見られる小津映画、全三十七本(若き日の小津(1) サイレント時代
若き日の小津(2) トーキーになってから ほか)
著者等紹介
中野翠[ナカノミドリ]
コラムニスト、エッセイスト。早稲田大学政経学部卒業。出版社勤務を経て文筆業へ。社会・事件に関する批評のほか、映画や本、落語に関する文章で知られる。1985年、「サンデー毎日」に連載を始め現在も継続中。週刊文春「シネマチャート」評者の一人でもある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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- 評価
稲岡慶郎の本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
今ごろになって『虎に翼』を観ているおじさん・寺
68
【まいにち小津安二郎】最近、読友さんのお陰で、小津安二郎の映画にはまっている。現存する作品の半分観たので、そろそろ小津論のような本を読みたくなった。中野翠の本書はちょうど相応しい内容だった。私には中野さんみたいな着物や「いき」や落語を好む江戸っ子気質は無いのだが、良いと思う作品や悪いと思う作品がほぼほぼ一緒で驚いた。私も『宗方姉妹』や『風の中の牝鶏』といった、田中絹代が出る作品はイマイチだと思うし、『東京暮色』もイマイチだと思う。そして『淑女は何を忘れたか』は素晴らしいと思う。敷居が低くて嬉しい監督論。2021/07/22
踊る猫
33
読ませる文章が揃っている。私は無粋な人間なので小津のファッションにはチェックが至らなかったのだが、この書き手は小津のセンスの良さを丁寧に拾ってみせる。愛情に裏打ちされた批判も読み応えあり。隠れた名著……というのは失礼だろうか。俗に言う教養のあるシネフィルばかりが小津を語れるわけではない(むろん、中野の教養も相当なものだが)。もっとこの著者の映画トークを聞いてみたくなった。私は男だからか、この本に関してはどうしても中立的な意見を言えそうにない。思い浮かぶのは「女性ならでは」「女性だからこその」といった言葉だ2021/03/10
みつ
24
再読。読書記録では12年前の「晩春」から「麦秋」(いずれも、小津監督の代表作の名でもある。)に移るこの時期一旦読み終え、以降、好きな箇所を何度も読み返した本。今年彼の生誕120年、没後60年ということもあり(60歳の誕生日に死去)記録することに。「何でもないことは流行に従う。(中略)芸術のことは自分に従う」を信条とし、著しく特徴的な映画スタイルを貫いた彼の「好み」について、ファッションや画面構成を中心に述べる。特に前者は、闊達なスケッチと相まって、その魅力が伝わってくる。セリフについても新たな発見あり➡️2023/05/03
カタコッタ
13
小津映画の見方が、自分と同じ目線を感じ、小気味好い切れ味ある文章と相まってとても愉快で楽しくよんだ。 『中野翠ごのみ』となった私である。2017/06/02
かふ
9
小津の映画の女たちは踏み外さない女たちでメロドラマが希薄。おじさまごっこというのは肯ける。原節子から司葉子、岩下志麻に受け継がれるヒロイン「紀子」キャラの話が面白い。原節子はその後はお母さんの「秋子」キャラに。紀子の友達は活発な「あや」でこれも淡島千景から岡田茉莉子に受け継がれる。「あや」キャラがいいと思うのはおじさん転がしなんか。2011/11/12
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