出版社内容情報
「転」の巻は、エッセイを中心に。「生態を変える記」「庶民烈伝序章」「流浪の手記」「ゲコの酌」「夢屋往来」「秘戯」などを収録。
目次
生態を変える記
庶民烈伝 序章
おくま嘘歌(『庶民烈伝』その一)
数の年令
流浪の手記
思い出多き女おきん
初恋は悲しきものよおぐるまの日記
いのちのともしび
居留守の礼
ゲコの酌〔ほか〕
著者等紹介
深沢七郎[フカサワシチロウ]
1914年山梨県東八代郡石和町(現笛吹市)生れ。旧制日川中学校(現山梨県立日川高等学校)卒業。1956年『楢山節考』で中央公論新人賞受賞。その作品は文壇に大きな衝撃を与えた。1960年に発表した『風流夢譚』がもとで中央公論社社長宅が右翼に襲撃される事件が起こったため、一時筆を折り各地を放浪。その後、『流浪の手記』を発表して復帰。1965年、埼玉県南埼玉郡菖蒲町に「ラブミー農場」を開き、以後そこに住んだ。1987年心不全のため没
戌井昭人[イヌイアキト]
1971年東京都出身。鉄割アルバトロスケット主宰。『まずいスープ』で芥川賞候補(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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- 評価
本屋のカガヤの本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
メタボン
27
☆☆☆☆☆ 深沢七郎初読。博多人形の裏返しに強い土俗的な性を感じる「秘戯」が圧巻。エッセイと言いながらも一級の私小説となっている短編の作品群も虜にさせられる。一つの作品の中で、話題が跳躍することが多いのは、ギター弾きでもある深沢が音楽に造詣が深いことにも起因するのか。庶民とはどのような性格の人を言うのか次々に繰り出される「庶民列伝序章」も面白い。そして庶民列伝の中の「おくま嘘歌」のノスタルジーは素晴らしい。札幌が舞台となる「流浪の手記」も惹きこまれるし、「数の年齢」のシュールさも秀逸。すごい作家だ。2015/10/26
志田健治
4
やっぱり『秘戯』だな。ぞくぞくして読んだ。庶民列伝も深い哲学を感じる。もっと読まれるべき作家ですな。まあ、わかる人少ないだろうけど。
味噌漬の味
4
深沢七郎の文章にはものすごいオーラというか、魂というか、とにかくものすごいものがうごめいていると思った。むしろそのうごめいているものがそのまま文章になって跳ねたり跳んだりぐったりしたりしているような・・・。サラッとした「うまい文章」とは真逆の性質だと思った。この本は読んで面白いし、名言だらけでとても良かった。特に『秘戯』には深く感動した。そして解説まで読むと、また別の所から感動が溢れてきて涙が出そうになった。実はエッセイの方はあまり興味がなかったのですが、試しに読んでみて本当に良かった。本当に良い本でした2012/02/16
びん
1
昨日の夜から読んでいた。深沢さんが実際に目の前にいたら、うるさいだろうな、仲良くなりたくないな、と思いながらも、なにかに背中を押されるように読み続けた。「おくま嘘歌」にぼろぼろっときて、「いのちのともしび」でいちごをいっぱい食べたくなって(旅先で食べたいちごを思い出して)、「続 夢屋往来」に寂しくなって、「秘戯」にぞわぞわした。最後に「秘戯」をもってくるのはずるい。すごかった。2017/06/15