内容説明
特異な自然との共感能力をもつロレンスは、生涯にわたり、病める現代文明を癒す道を探し求めた。透徹した眼で人の魂の闇を見つめ、新しい人と人の絆、人間と自然との結びつきを模索した『チャタレー夫人の恋人』の作者による短篇小説が、ロレンス研究の第一人者によるオリジナル編訳で、いま鮮烈によみがえる。膨大な作品群の中から、「プロシア士官」など10篇を収録する。
著者等紹介
ロレンス,D.H.[ロレンス,D.H.][Lawrence,D.H.]
1885‐1930。炭坑の「採炭請負人」の息子として生まれ、南仏ヴァンスで亡くなる。20世紀イギリス文学を代表する作家。『恋する女たち』『息子と恋人』『チャタレー夫人の恋人』『羽毛ある蛇』など12作の長篇小説を始め、数多くの中・短篇小説、戯曲、紀行文、評論・エッセイを遺した
井上義夫[イノウエヨシオ]
1946年生れ。現在、一橋大学大学院言語社会研究科特任教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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壱萬参仟縁
11
ケインズがホモセクシュアル?(訳者解説 287ページ)。ホントかと思ったが。それよりも、実務からの理論提起に価値がある。「木馬に乗った少年」で、ポールにも家庭教師がついた。理由は父親がパブリック・スクールの名門イートン校ということで、ラテン語やギリシア語を二人三脚で学んだようだ(150ページ)。「英国、わが英国」では、「母親だけが、子供に対する義務という、倫理的な情熱に身を委ねた」(252ページ)。これでは父親の役割=父性が欠如しているので、子供は健全に育たないよ。私の父親は子の失態を母のせいにしたので。2013/02/25
N田
9
有名作を一つも読んだことがなく、渡辺淳一の親玉くらいに思っていたのですが、この短編集を読んで考えが変わりました。グレートな作家なんだわ。2016/08/10
きりぱい
9
「薔薇園の影」と「木馬に乗った少年」がよかった。旅行先で何やら妻はひとりになりたがり、追及する夫も煩わしいけど、勝手に昔を偲んでいる妻も罪作りに思える話と、少年の競馬予想が哀れを誘う話。「英国、わが英国」は、怠惰な夫が迎えるラスト数ページには圧倒される。「ストライキ弁当」は、姑の婿バッシングには実感しつつ、娘(妻)の出方が意外で、へえ~と悪くないのに、ダービシャー訛りが大阪弁で、も~気になる!ヨークシャー訛りが九州弁になっているのにも出会ったことがあるけれど、どうも気が散る。2012/04/04
tona
4
一匹の兎が登場する「アドルフ」、モグラが登場する「次善の策」、そして蛇が出てくる「太陽」など、ロレンス作品の根底を流れているものであろう、自然(動物)と人間の出会い、結びつき、あるいは断絶、そして、「英国、わが英国」に描かれているような第一次世界大戦の影がそこかしこに感じられる10作品が収録された一冊。個人的には、ロレンスは長編よりも短編小説の方が好きです。2013/06/02
ドミニク
2
★★★★☆ ロレンスは『チャタレイ』の作者としてしか知らなかった。ただ、たまたま近所の古本屋で安く売っていたので買ってみたに過ぎない。ところが最初の短編を読み終えてのけぞった。これほどまでに稠密な短編に出会ったのは、E・パールマン『双眼鏡からの眺め』以来。しかも人間を見つめるその眼差しが恐ろしく鋭い(恐ろしく冷たいのはナボコフ)。本書に収められたどの作品も救いがないが、それは人間存在の救いのなさのそのまま表している。読了後『チャタレイ』も読んだが、文学作品としての凝集力はこちらの方が上であると感じた。2015/11/26
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