内容説明
何があってもおかしくない「江戸」時代。何が起こっても不思議でない都市「江戸」。それは、アムステルダムも蘇州もソウルも含みこむ場所であり、彫刻、絵画から手拭いまで、百のお多福、蝶、馬が駆け巡り、ベルニーニのエクスタシーもフェルメールの新興市民も全てをるつぼのように内在させていた。それら図像を縦横無尽に読み解く快著。芸術選奨文科大臣賞、サントリー学芸賞受賞。
目次
大根だって死ねばスター
蝶々だけの宇宙
猿も気からモデル
河原のまいにち
西洋東洋渾然一体
謎の花々
お多福をもういちど
猫も踊る世の中
獅子が空を飛ぶ
馬は二つの宇宙を駆けめぐる〔ほか〕
著者等紹介
田中優子[タナカユウコ]
1952年神奈川県横浜市生まれ。1980年法政大学大学院博士課程(日本文学専攻)修了。法政大学社会学部教授(近世文学)。『江戸百夢』(朝日新聞社)で芸術選奨文部科学大臣賞、サントリー学芸賞受賞。2005年紫綬褒章受章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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em
18
どんどん気温が上がる中、背表紙の「百」の文字に目が留まる。『百物語』のお隣にあったので一緒に。暑さでうつろな頭には、百の何かを詰めてみたくなるのでしょうか。お多福、獅子、琉球人などなど、楽しい江戸の絵解き。はっとさせられたのは、フェルメールのオランダ。言われてみれば、繋がっている。「フェルメールの見た近世とは、長崎やバタヴィアやインドや台湾で得た富が巡り巡って作り上げた上流市民社会だった。その輝かしくなつかしい生活は、同時に世界の亀裂の上に成り立つ豊かさでもあった」2018/07/24
tama
8
図書館閉架本 2000年出版 素晴らしい本に巡り会えて嬉しい!赤瀬川さんのに初めて出会った時のような興奮状態。日本画だけでなく同時代の(200年間)西欧、中国の絵も対象。虹橋の船は着岸に失敗して船尾が押し流されそうなのでは?姑蘇は安野さんの色調のようで旅人君を探したくなる。日本人は金唐革大好きでタイ・ベトナムでは上得意。「春画は男女とも必ず参加する性交の祭り」「そのため多くの春画に隠微さが欠けている」これ凄い見方!!衣服の柄に風景を入れるのは日本だけ!?縞と言う文字はストライプを意味せず元は島!?2023/01/05
なおこっか
3
今後も何度も開くだろう。幸せな図像“尽くし”の本。所謂江戸時代、江戸という都市に留まらない、近世の世界を鳥瞰で楽しむ本。そもそも江戸が鎖国の名目中も細くしかし確かに世界とつながっていて、そのつながった先の中国やインドやポルトガルやオランダの同時代へたどり着く楽しさを教えて下さったのは、田中先生ご自身だ。2011/02/04
果てなき冒険たまこ
1
タイトルとは違って江戸時代頃(17〜19世紀頃)の美術品に関するエッセイ的な作品。 文体がいかにも気が利いてます的であまり好きではないが目の付け所はなかなか面白いものが多かった。2023/06/20
鳴蝉
1
「どう? のぞいてみる?」と言いたげな表紙の画からして、遊び心満載の江戸時代を感じます。著者の解説によって広がる、めくるめく夢の世界、図像の中にある味わい深い世界を楽しめます。読んでいて面白いのは、著者自身も好きで楽しんでいるのを感じるからかもしれません。読んだ後に、「いいなあ、江戸!」と思いました。2010/08/04