出版社内容情報
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内容説明
マッチョなイメージの強いヘミングウェイだが、彼はモダニズムの作家として、繊細でおそろしいほどの切れ味をもつ短篇を生みだした。彼は、女たちをひじょうに優しい手つきで描く。弱く寂しい男たち、冷静で寛大な女たちを登場させて描きだしたのは、「人間のなかで人間であることの孤独」だった。ジョイスが完璧と賞賛した「清潔で明るい場所」をはじめ、14作を新訳・新編集で贈る。
著者等紹介
ヘミングウェイ,アーネスト[ヘミングウェイ,アーネスト][Hemingway,Ernest]
1899‐1961。作家。アメリカ、シカゴ郊外で生まれる。新聞記者をしたのち、1918年赤十字要員として北イタリア戦線に参加、重傷を負って帰国。その後パリに渡り、G・スタインらと親交を深め、小説を書き始める。『日はまた昇る』『武器よさらば』で作家の地位を確立。スペイン内乱、第二次世界大戦にも参加。54年ノーベル賞受賞。61年猟銃で自殺
西崎憲[ニシザキケン]
翻訳家・作家・アンソロジスト。『世界の果ての庭』で日本ファンタジーノベル大賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
buchipanda3
111
短篇選集。「敗れざる者」と「キリマンジャロの雪」を目当てでこちらを。と言いながら他にも印象に残る作品が結構あった。特に以前、他の選集で読んだものが2度目でより味わいが感じられた気がする。オチを既に知っており、それを踏まえてじっくりと文章を咀嚼したことで醸し出される情緒が纏わり付いて離さないと思えた。さらに著者の生涯を知り、彼自身の投影に気付き、弱さからの強がりや卑しさ、苦悩(書けないとか)などやり切れなさとそれに対する鼓舞が端麗な文章から滲み出ていると感じた。噛めば噛むほどということでまた改めて読みたい。2021/09/30
中玉ケビン砂糖
96
【祈念】「ヘミングウェイが看破したように、ぼくらの人生は勝ち方によってではなく、その敗れ去り方によって最終的な価値を定められるのです」(村上春樹「かえるくん、東京を救う」『神の子どもたちはみな踊る』所収)、予定を変更し「敗れざる者」を。「敗北」とは死の待望ではなく、あくまでも「諦められる生」のことだ。驕慢で楽観的な勝ちへのこだわりは、「生への覚悟」を揺さぶるリスクに繫がる。留意すべきは敗れることなく不屈であること、つまり万事において愚直に耐え、愚直に忍び、ただ愚直に生きてあること。2024/01/01
やいっち
77
楽しみたいので敢えて四日ほどを費やして。本の案内には、「ヘミングウェイは弱く寂しい男たち、冷静で寛大な女たちを登場させ「人間であることの孤独」を描く」とある。 行動派の作家とかダシール・ハメット、レイモンド・チャンドラーと後に続くハードボイルド文学の原点とされる作品を書いて来たとか云われる。2024/10/31
Y2K☮
42
著者はマッチョで破天荒な印象だが、生来の性質ではなく憧れの投影と劣等感への反発だったのではないか(だから無理をして戦場で大怪我をしたり事故に遭ったり)。もしくは昔のレスラーみたいにリング上で演じる荒唐無稽なキャラに現実の自分が引っ張られ、どちらがどちらか分からなくなったか。でもそのバランスが上手くいっていた時期の作品はまさにマスターピース。「清潔で明るい場所」「白い像のような山並み」「殺し屋」「キリマンジャロの雪」など。三島とヘミングウェイの対談があったら読みたい。おまえもそうか、とは云わないだろうけど。2020/05/04
ケイティ
35
『老人と海』未読なのに短編集に手を出してみました。突然物語にねじこまれ、そのまま放り出されるような終わり方がじわじわと癖になる。頁数がかなり少ない作品も多いのに、どれも濃厚で印象深く残ります。シニカルなユーモアと、そこはかとなく漂う虚無感。そして、淡々とした諦観の中に恐れが混在するいびつさが心地よかった。この面白さがぐっとくるように思えたのはタイミングもあったかも。「この身を横たえて」が一番好きでした。2024/08/17