出版社内容情報
内容は後日登録
内容説明
僕は天上で暮らす“朗読鼠”。地上の作家が三人称で小説を書く時に、第三の声となってサポートするのが仕事だ。ある日、担当する作家の船山鉄夫君が、突然、予定を変更して一人称小説を書き始めてしまい…。笑いと哀しみをくぐりぬける小さな冒険を描いた表題作他二編を収録。この世ならぬ不思議な喜びを届ける、三つの始まりの物語。
著者等紹介
吉田篤弘[ヨシダアツヒロ]
1962年東京生まれ。小説を執筆するかたわら、「クラフト・エヴィング商會」名義による著作と装幀の仕事を続けてきた。2001年講談社出版文化賞・ブックデザイン賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
116
吉田さんの習作のような感じの小説です。吉田さんの本はいつも読んでいる本に比べると読んでいてゆったりとした気持ちになるので時たま読ませてもらっています。この本も三つの短篇「一角獣」「百鼠」「到来」が収められていてそれが第1章だけで終わっています。物語としては普段の生活の世っとしたことなどを見つめ直している気がします。最初の「一角獣」が印象に残りました。2024/08/30
コットン
88
同時進行でゆるい関連のある三つの短編集。『一角獣』の大きな湿布を「ワイエスの画集とバルテュスの画集のあいだに挟んである…」とか、『襲来』の「そのあとしばらく中村屋君とは口をきかなかったし、いまだもそれはどこかに細い尾を引いて、尾の先のくるんと丸まったところがリングになってわたしの薬指にまきついている。」とかの表現が素敵だ。2014/07/30
ユメ
56
これは三つの物語の第一章。全てが物語の始まり。読んでいて不思議な心地になる。姿が消えゆくような気分になったり、かと思えば自分の輪郭がくっきり見えてきたような気がしたり。霧の中に佇んでいるようなこの感じ、悪くない。吉田さんの耳元で朗読鼠が囁くと、真っ白な紙の上で命が生まれ、名前をもらって動き出す。その命名のセンスがとても優しくて、大好きだ。角の名刺屋、グロッケン通り、中村屋くん…いつも私の心の隙間にするりと入り込んでくる。架空バスを運転する六歳のモルト氏が吉田さんの少年時代そのもので、とても微笑ましかった。2014/08/21
ダリヤ
41
一角獣、百鼠、到来の三つの物語は、どれもこれからはじまるさまざまな予感をただよわせながら、しずかにそのさきのかのうせいをむげんにのこしたまま、この一冊はおわってしまう。吉田さんが文字にしていく世界は、ほんとうに不思議で仕方がないのに、どうも居心地がよくてぬけだせなくなってしまう魅力的な文章がつまってる。このはじまりの物語たちが行き着く先を、いつか読めたらいいな。2013/01/14
sibarin♪
36
ファンタジーのような そうでないような。不思議な世界のような 現実のような・・・。それにしても自転車の角は何を象徴しているんだろう?どれも二章が欲しいけど、一番よみたいなと思ったのは、表題の百鼠。2014/10/04