出版社内容情報
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内容説明
戦後、渋谷の盛り場に、花形敬という男がいた。インテリヤクザ安藤組の大幹部で、あの力道山よりも喧嘩が強いといわれた男。うちに虎を飼い、心に抱えた屈託を暴力という形でしか表わせなかった男。一般人とアウトローを分ける境界線などなかった戦後の焼け跡で、己の腕一本を頼りにのしあがった男の光と影を、時代の空気とともに切り取ったノンフィクション。
著者等紹介
本田靖春[ホンダヤスハル]
1933年、朝鮮に生まれる。55年、早稲田大学政経学部新聞学科卒業後、読売新聞社に入社、社会部記者、ニューヨーク特派員などを経て、71年退社。64年には、売血の実態を告発し、現在の100%献血制度のきっかけとなった「黄色い血」キャンペーンを展開する。77年、『誘拐』で文藝春秋読者賞、講談社出版文化賞受賞、84年、『不当逮捕』で講談社ノンフィクション賞受賞。2004年死去。『我、拗ね者として生涯を閉ず』が遺作となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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遥かなる想い
147
花形敬という戦後のやくざを描いた作品である。 力道山よりも強かった男が 腕節一本で のし上がっっていった風景は、昭和の任侠映画を見るようで 心地よい。 ノスタルジー満載だが、なぜか懐かしく 著者の想いが感じられる。2020/05/19
姉勤
45
徴用と空襲によって、何もかもを無くした終戦直後。誰もが生き残るために暴力と卑屈を許容した時代。ステゴロ(素手での喧嘩)で敵う者なし。かの力道山も憚ったという孤高のヤクザ、花形敬の一生。誰にも遠慮なく、たとえ有力者であろうと制し続け、それが祟って凶刃に倒れるまでを、戦後社会と著者や同時代を過ごした先達の共通した境遇、証言を交え、混沌と混乱から、日本がいかに秩序を取り戻し、高度成長時代へとフェーズシフトしたかを、復興の原動力となった無法者たちに託して遺す。現代の為政者、理想主義者が消し尽くしたい、傷痕。2015/10/16
ばんだねいっぺい
17
「天に星、巷に反吐のクリスマス」この川柳が気に入った。荒涼たる戦後の風景。2016/02/02
チェアー
10
花形敬の時代を描くという名目で、実は戦後のどさくさを総括したノンフィクション。どんな道も、自分にまったく関係のない道はないんだと思う。ひょんなことでその道を歩いてしまうことは多々あるのだな。それは偶然というか引きというか。戦争直後を経験した筆者の思いも重なり、花形は一つの象徴として描かれる。2020/03/20
本 読むぞう
9
板垣恵介先生の漫画「刃牙」の登場人物、花山薫のモデルとなったヤクザ、花形敬のノンフィクションです。漫画の花山薫は、男らしさがほとんど様式美の域まで達していますが、現実の花形敬は、ときには逃げたり迷ったり、人間くさい弱さも普通に持ち合わせていたようです。 世の中には、知恵もあり、腕っぷしも強く、人望もあるのに、おかしな方にしか人生が転がらないやつが思いの他いて、それを鑑みると、「本物の男」になるのは険しい道のりだなあ、2013/11/23