内容説明
鴎外の文章に沈着・冷静・簡潔と香気を感じ「すぐれた散文とはこういうものか」と感動した著者が後年綴った散文には、まさに香気がただよっている。日本人のよってきたる源、遙か古代に想いをはせた表題作をはじめ、敬愛する山之口貘、吉野弘、山本安英、木下順二等について綴った選りすぐりのエッセイ集。
目次
一本の茎の上に
内海
涼しさや
もう一つの勧進帳
歌物語
女へのまなざし
平熱の詩
祝婚歌
尹東柱について
晩学の泥棒〔ほか〕
著者等紹介
茨木のり子[イバラギノリコ]
1926‐2006年。大阪に生まれる。詩人。1953年、詩学研究会に投稿していた川崎洋と詩誌「櫂」を創刊。1976年より韓国語を学び始める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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masa@レビューお休み中
116
本の中身を確認せずに購入してしまった。装丁とタイトルから、詩集だと思いこんでいたのですが、エッセイ集でした。今まで書いた散文を集めたものだそうです。旅のこと、本のこと、歌舞伎のこと、韓国のこと、そして詩のことなどが書かれています。不勉強のため、知らない事柄、人物が多々登場します。しかし、茨木さんの説明を読んでいると、なんとなくのイメージが湧いて、敢えて何かを調べずとも内容を理解することができるのです。言葉にも、日本語にも、そして詩人としても誠実で真摯に向き合っていることがわかる文章なのです。2014/10/12
モリー
50
茨木のり子さんは、言わずと知れた詩人ですが、散文の名手でもあったのかと、この本を読んで感じ入りました。(本人は、苦手と謙遜していますが)文庫本の中には、様々な雑誌などに散らばっている文章を編んだものが有りますが、この本がまさにその類。詩と散文の違いを洞察した「散文」という文章が特に良かった。『国語通信』という雑誌に掲載された文章のようですが、このような文庫本で紹介されなければ、多くの人に読まれることなく図書館の所蔵庫に眠っていたことでしょう。この本を編んでくれた、ちくま文庫編集部の中川美智子さんに感謝。2024/11/03
フム
36
時々戻って来たい場所、というか帰ってきてしまう。背伸びした読書をしがちなので、自分を見失わないようにしたい。このエッセイ集には茨木さんが敬慕してやまない方々との思い出が語られている。金子光晴、吉野弘、尹東柱など、私も好んで手にとったことのある詩人の名前を次々見つけて嬉しかった。考えてみると、茨木さんのエッセイ集を読んだのははじめてかもしれない。「夕鶴」の、つうを演じて名高い山本安英さんとのエピソードに茨木さんの「汲む」の詩の一節があり、この言葉が山本さんが茨木さんに語った言葉だと知った。何とも素敵である。2020/11/30
mntmt
18
著者の詩が好きです。詩ではない文章は初めてです。詩と同じくらい、凛としているなぁ。2022/05/19
ジョニジョニ
17
詩人のかくエッセイは新鮮でした。上品でかわいらしく思うところもあるけど、根底に、言葉をえらぶ鋭いまなざしがみえます。2019/05/16