内容説明
現代文学に決定的な衝撃を与え、今なお“来るべき作家”であり続けるカフカの中短篇をテーマ別に三冊に編み、それぞれ最良の訳者による新訳でおくるベストセレクション。本第1巻は「時空/認知」。
著者等紹介
カフカ,フランツ[カフカ,フランツ][Kafka,Franz]
1883年、当時、オーストリア=ハンガリー帝国領のプラハに生まれる。ユダヤ系のドイツ語作家。法学を専攻し、1908年プラハの労働者災害保険協会に就職。1924年、死去
平野嘉彦[ヒラノヨシヒコ]
1944年生まれ。東京大学名誉教授。ドイツ文学専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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優希
73
断片、掌編の数々は夢と現の狭間に突き落とすようでした。時空と認知とあるように、まさに時間を彷徨う感覚。2018/05/23
白義
13
どう考えてもただならないことが起こっているか、あるいは逆に起こらなすぎるのにそんな外界の事情には素っ気ない登場人物、そんな内面と接続されたような調子外れな時空間、これぞカフカという感じがする。空間が小説に合わせて伸び縮みするのを手で沿っていくような、吐き気も何もない静かな不気味さ、それが突然断ち切られて立ち尽くす感覚が味わえる。前半のショートショート集と万里の長城が築かれた時が今回は楽しめた。主な中短編を総覧するのに便利なシリーズ2012/08/09
壱萬参仟縁
11
「あるたたかいの記」では太った男が登場。評者も太った中年。自戒を込めて視ていると、「太った男はいった。『岸辺のお方、私を救おうなどとなさらないでください。これは水と風の復讐なのです。もう私はお陀仏です。ええ、復讐なのですよ』」(278頁)。この太った男=文明人と言い換えてもいいだろうが、文明人は文明の終着駅=原発事故に降り立ち、帰りの電車はない。今、3.11後2年のTV番組をやっているが、福一原発周辺の汚染水タンクやマンパワーの不足、地下水にも、やはり、漏れているということで収束は嘘。放射能が太っている。2013/03/10
還暦院erk
8
図書館本。断片のような作品や未完作が多く、本書は通読には至らなかった(「あるたたかいの記」はシュールでも割と面白くて読了)。ともあれ、カフカの全作品を渉猟するのは自分には無理だと再認識。物語として何が何だかわからない文章を読み続けているのはストレスたまるんだよ。ファンの人ごめんね。2019/08/04
rinakko
6
既読の作品も幾つかある中、未完なのかどうかも定かではない断章が並んでいる辺りが楽しかった。あとは、未読だった「村の学校教師」や「エードゥアルト・ラバーンは、廊下を抜けて」、「あるたたかいの記」の奇妙な味わいがよかった。2015/05/16