内容説明
邪馬台国や倭国が、そのまま今の日本になったのではない。日本国の成立には、7世紀・中国の政治情勢の変化が大きく関わっているのである。本書は、東アジア史の視点に立って、中国文明の辺境の地から日本国が成立するまでを実証的に解明し、従来のような、縄文時代、弥生時代、古墳時代といった歴史区分ではなく、世界史の一部として日本古代史をとらえようとした意欲的試みである。
目次
日本の歴史をどう見るか
第1部 倭国は中国世界の一部だった(邪馬台国は中国の一部だった;邪馬台国の位置;親魏倭王・卑弥呼と西域;倭人とシルク・ロード;日本建国前のアジア情勢;中国側から見た遣唐使;「魏志東夷伝」の世界)
第2部 日本は外圧のもとに成立した(日本誕生;神託が作った「大和朝廷」;新しい神話―騎馬民族説;日本人は単一民族か;日本語は人造語だ;歴史の見方について)
著者等紹介
岡田英弘[オカダヒデヒロ]
1931年東京都生まれ。東京大学文学部卒。57年『満文老档』の研究で日本学士院賞受賞。現在、東京外国語大学名誉教授。その研究は中国史、モンゴル史、満洲史など広範にわたる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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- 評価
日本棚
感想・レビュー
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中年サラリーマン
18
著者は言う、日本国建国は天智天皇即位の668年だと。それ以前は日本としてひとつにまとまっていなかった、と。なぜか?それは日本だけを見ているだけではダメで朝鮮半島、中国あるいはイランモンゴル辺りまで視野を広げその影響を考慮する必要があるから。ということで中国の文献を駆使して日本国建国への考察を進めていく書。内容は面白かった。あと、最後の「歴史の見方について」という文章で歴史とは世界を把握しようとするその切り口のことであると述べているのは大変正直で交換がもてる。著者の見方も一部といっているのに等しいからだ。2014/07/19
壱萬参仟縁
17
「歴史は、人間が世界を見る見方を、言葉で表現したものである」(9頁)。3Cの中国にとって、日本列島の意味を鋭く問うている(26頁)。紀元前2C終わりに日本人は中国支配下。400年以上シナ語を公用語とし、皇帝下で平和に暮らした(38頁)。日本の建国者は華僑で、日本人は文化的に華僑の子孫(56頁)。古代の謎に鋭く迫るので説得力を感じる。『日本書紀』の記述にも誤りがあるようだ(148頁)。史料といえども、批判的に検討する科学的態度が必要だと思った。史書にもフィクションが織り交ぜられていると差し引く(150頁)。2014/01/03
NICK
10
岡田史学は過激だ。邪馬台国や聖徳太子、古事記など日本のルーツに関わる事物など実際にはなかった、あるいは偽作であったと一刀両断するのだから。『魏志倭人伝』は当時の中国(晋)の政治状況を反映したもので、事実をそのまま伝えていない。隣国に対し晋朝の政治的権威を誇示するために統一国家としての邪馬台国が捏造されたのだ。著者の論旨はかなり荒唐無稽に過ぎるところがある。しかし「日本」という国家のルーツを改めて考えるにおいて新鮮な材料を提供してくれることは間違いない。特に、「右傾化」とささやかれる現代日本にとっては……2013/09/26
bapaksejahtera
7
学者の業績は多く青壮年期に成立する。岡田氏は満蒙を中心とする北方民族と中華のあり方を中心に研究された。よって日本史のみを対象とする狭い視野に拘泥した史観には強く反発する。氏は極めて若年で斯界の栄を極めたにも拘らずその後の芳しからざる学界処遇を反映して著述活動に「伝道」的な趣の強いことは否めぬ。しかしながら歴史学の拠て立たざるを得ぬ「正史」と「事実」とが当然に大いに乖離せざるを得ぬという前提で我らが来し方を見る時、今日の歴史観という物が如何に根拠に乏しいか、氏の主張の余りに正当なる事に頭を垂れるのである。2020/09/23
氷柱
6
603作目。7月29日から。邪馬台国を中心とした中国との過去の日本の関係性を説いた作品。邪馬台国の位置についての独特の説も非常に興味深い。さらに中国の保持していた力や日本以外の他国との関係性、「国」という概念についての説なんかもわかりやすく、歴史の授業では聞けないような部分まで深堀されていた。もちろん難しい単語なんかは予習をするなりして前提となる知識を仕入れておくとこの作品をより深く理解できるようになる。しかしこの作品の内容もまた別の作品を楽しむ上で重要な予習文献ともなりうる。2020/08/02