内容説明
落語ブームと言われる中、「古典」は生き続けている。昭和の名人、六代目三遊亭圓生。その精緻な話芸は『三遊亭圓生人情噺集成』、『圓生百席』として残された。このレコードをプロデュースした若き日の著者が、圓生を初めておとない、録音室での制作、そして名人との突然の別れに至るまでの濃密な日々を描く。愛惜をこめて描かれる“稀代の芸の鬼”の情熱と素顔。
目次
第1章 録音室への道(花びらの道;青年の眼 ほか)
第2章 録音室の日々(静かなはじまり;松はゆがみて ほか)
第3章 録音室のそと(圓生の二十世紀;『淀五郎』と王選手の記録 ほか)
第4章 録音室との別れ(録音の終わり;ホットミルク ほか)
著者等紹介
京須偕充[キョウストモミツ]
昭和17年、東京生まれ。ソニー・ミュージック学芸プロデューサー時代に三遊亭圓生『圓生百席』の録音を手がけ、録音を渋っていた古今亭志ん朝が、唯一その高座の録音を許した。TBS系TV放映「落語研究会」解説も務める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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LNGMN
9
落語レコード「圓生百席」のプロデューサーが三遊亭圓生と過ごした日々を綴る。「圓生百席」の格別なところは客席の笑い声が入ったライブ録音ではなくレコーディングスタジオに篭って作り上げた録音芸術であること。まくらからサゲまで一気に録りきった噺もあるそうだが、多くは圓生が気に入らない「疵」のある箇所だけ録り直したり、タイミング調整やテイクを切り貼りし、極みを目指して作られた噺だ。不出来な己を責め、エンジニアと録音編集で試行錯誤し、限りなく理想に近づいた作品に満足そうに笑う圓生の姿はビートルズの面々に似ている。2023/11/13
hitsuji023
5
圓生百席を中心とした話。面白いエピソード満載ということではないけれど、圓生の落語に対する姿勢、作品に取り組む姿勢、とにかく真面目の一言に尽きると思う。さすがに「名人」である。そして、著者のような人がいたことで現在その作品を聞く事が出来る。後生の人にとってこんなに有り難いことはない。2017/06/30
志村真幸
4
1987年に青蛙房から出た単行本の文庫化。 著者はソニー・ミュージックで、6代目三遊亭圓生の『圓生百席』『三遊亭圓生人情噺集成』などをプロデュースした人物。 録音・編集を通じての圓生との関わりを回顧した文章なのだが、圓生の姿が生き生きと描かれており、優れた伝記となっている。細かな表現にやたらとこだわり、とっつきにくいようで愛嬌があり、一本通った尊敬すべき人物。 そんな人物とレコードをつくるのはどれだけ楽しく、やりがいがあっただろう。 落語や圓生に関心のないひとが読んだとしても、おもしろいと思う。2018/03/10
fuchsia
3
最新の録音技術や編集作業によって再構成された自分の噺に「もっとよくなる筈」と燃え上がってしまう師匠が良い。2013/05/12
Shigeo Torii
2
どのようにレコード作りが始まり、終わったか興味深く読んだ。また、話を聞こうと。2021/09/12
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