内容説明
プルースト『失われた時を求めて』の典雅な名訳で知られる訳者は、若いときから詩の世界を志向していた。文章家としても名高い仏文学者が、最晩年にまとめ、残したフランス詩の選集。ルネサンスの抒情詩人ロンサールから、ユゴー、ネルヴァル、ボードレール、マラルメ、ヴェルレーヌ、ランボーまで、11人を収録。『海潮音』『珊瑚集』『月下の一群』に連なる馥郁たる香りの訳詩集。
目次
ロンサール
デュ・ベレー
アンドレ・シェニエ
ユゴー
ネルヴァル
テオフィル・ゴーチエ
ルコント・ド・リール
ボードレール
マラルメ
ヴェルレーヌ
ランボー
著者等紹介
井上究一郎[イノウエキュウイチロウ]
1909‐1999。大阪生まれ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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lily
108
フランスの官能映画のようにシルエットが映えるくらいの月明かりの中で輪郭をなぞったような麗しさよ。人物紹介も興味深い。ミュッセの「世紀児の告白」を直ぐに読みたい本にポチっと。2020/10/31
ロビン
16
『失われた時を求めて』の個人全訳でも知られ、若い時から詩の世界を志向していたという井上究一郎によるフランス名詩集である。ロンサールからランボーまで11人の詩人の作品で編まれている。特にヴェルレーヌとランボーの詩については詳細な註解が付されていて、訳者の思い入れを感じるとともに二人の詩人の関係性の強さ、その詩の意味の深さを思わせられた。個人的にはアンドレ・シェニエやデュ・ベレー、ルコント・ド・リールなど詩の世界では高名だが一般に知名度が低く詩集を入手しにくい詩人の作品が収録されているのが嬉しかった。2020/11/24
うた
3
「いま、私の活動期は燃え尽きる松明のように衰え、なすべき仕事は終わった。いま、私は数多の喪と歳月を経て、墓に手を触れるばかり」。ああ、ユゴーがこんなに堂々とした詩人だなんて知らなかった。「秋の日、ながく すすり泣く ヴァイオリン、ぼくのこころは、とりとめもなく 物憂くて」。訳者の愛したヴェルレーヌ。これも良く響く。訳詩集というと堀口大學周辺の印象が強いけれど、須賀さんの『ウンベルト・サバ詩集』といい、数は少なくてもいいものはまだあるようだ。いいな。2013/12/23
miyuki
2
12月2日より。ロンサールに始まりランボーまでの11人で終わるこの一冊は古典派から浪漫派、高踏派を経て象徴詩まで辿っており、仏詩の流れを掴むことができる。訳者は日本での仏詩の受容の現状を補うべくユゴーの詩や、ヴェルレーヌ詩の詳しい注を入れていて素晴らしい。後半補注は詩の脚韻の指摘も多く、仏語を理解する人向けか。しかし故に原文でも読みたくなる、本当の仏文学入門として最適だ。訳詩の句点の使い方が少し気になるが、様々なフランスのromanceが詰まったこの訳詩集は、一冊の詩集とみてもその名の通り名詩集である。2014/12/05
bittersweet symphony
1
井上究一郎さんというとプルースト「失われた時を求めて」(全十巻)の個人訳を思い出し、ついでに8巻途中で読むのを止めたことまで思い出します(ものは全部揃っておりますが)。何で読むのを止めたのだったか…。この本は井上さんが長年温めてきた抒情詩集で結果的に最後の作品となったものです(原著刊行は1999年)。年代順に各詩人の作品が並んでいるのですが、2/3をボードレール、マラルメ、ヴェルレーヌ、ランボーの4人で占めています。2007/11/22