内容説明
今では「古典」となりつつある鴎外の名高い短篇小説『舞姫』を井上靖の名訳で味わう。訳文のほか、原文・脚注・解説を付して若い読者でも無理なく読める工夫を凝らした。また資料篇として、ベルリン留学時代の鴎外や「舞姫」エリスの謎についてなど、作品の背景を探る代表的文献を紹介。読みごたえのある名作をさらに深く味わえる一冊。
目次
現代語訳 舞姫
解説
舞姫(原文)
資料篇(資料・エリス(星新一)
兄の帰朝(小金井喜美子)
BERLIN1888(前田愛))
著者等紹介
森鴎外[モリオウガイ]
1862‐1922。小説家・医学者。本名は林太郎。島根県生まれ。東京医学校(現・東大医学部)予科卒業後、陸軍軍医となり、1884年ドイツへ留学。『雁』『阿部一族』『高瀬舟』ほか多数の小説・翻訳・評論等を残した
井上靖[イノウエヤスシ]
1907‐1991。小説家。代表作に『しろばんば』『氷壁』『天平の甍』など
山崎一穎[ヤマザキカズヒデ]
1938年長野県生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士課程満期退学。日本近代文学専攻。跡見学園女子大学教授。森鴎外記念会会長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ykmmr (^_^)
160
『たけくらべ』と同じように、口語訳で解釈。やはり…頭は痛くならない。物語は『悲劇』なんだが、豊太郎の自分の立場・世相・持っている見識で、「この選択肢しかない…。」というのが『結末』である訳だが、その『結末』が少しでも清潔感のあるように出来なかったのか?と思ってしまう。彼位の頭が有れば可能だったのに。まあ、ガチガチの肩の凝る生活で、『運命の…』や『情愛』に気持ちを持っていかれ、自分の知らない世界に入りたかったんだろうか…。2022/12/19
ehirano1
107
当方にとって原書はもはや古文書レベルだったので現代語版で触れてみました(苦笑)。凄まじい葛藤の話ですね。「可哀想なエリス、豊太郎の大バカ野郎」では済まないレベルだと感じました。エリスとの将来を取るのか、キャリアとしての将来を取るのか、これは先が長い若者にとっては究極の選択だと思います。悔いない選択を?いやいやそりゃあ無理ってもんです。これはどっち選んでも後悔しますから・・・・・。2017/05/13
アキ
91
以前原文で挫折した。現代語訳で手に取るも井上靖訳で、それでも古く感じてしまいますがなんとか読めます。主人公の官僚として相応しい仕事に邁進する生き方と、心に訴えかける少女エリスとの交歓の対比が際立つ。ベルリンのブランデンブルグ門の壮麗さと凱旋門の頂きの金色の神女の色彩の鮮やかさやが、ドイツで過ごす心や感情の豊かさを現すかのよう。産まれ来る子に希望を持ち襁褓(産着)を作るエリスが、大臣から帰国する要請に承諾した返事を知ると、精神に異常をきたし狂女と化すのが切なく、相沢を憎む気持ちは筋違いというものだろう。2020/12/21
夜長月🌙@読書会10周年
68
ドガの踊り子と同じくパトロンや支配人に厳しい制約を受ける舞姫。ドガの絵を一(いち)バレリーナの絵として観るかどうかと同じ関係を感じます。明治の国費留学生にとってみれば、個人より国家の重みが大きいのは時代背景と共に読むことが必要でしょう。しかし、最後の一文が誠に情けない。2023/08/23
たつや
57
以前、読んだときは何がナンやらで理解できなかったが、現代語訳を見つけ、衝動借り、薄い文庫に訳と原文と両方収められているお得感もある。鴎外流のラブストーリーと感じました。あのときああすれば!という葛藤が現代にも通じると思う。当時、よく海外に行く気になれたな~と感心する。丁寧な注訳や、図説もあり、イメージもわきやすい良書。2017/05/16