内容説明
いなか育ちの20歳のコレットが14歳年上の流行作家と結ばれ、パリの生活をはじめる。才気にあふれ、奇癖をあわせ持つ放蕩者の夫との奇妙な愛と破局、そして文壇へのデビューを、クールな官能性とエスプリ豊かな詩的文体で描く回想録の傑作。華麗の頂点を極めた時代のパリを絢爛と彩った高級娼婦、作家、芸術家たちの面影が、時の彼方にあざやかに浮かび上がる。長らくコレットに親しんできた第一人者による新訳。
著者等紹介
コレット,シドニー=ガブリエル[コレット,シドニーガブリエル][Colette,Sidonie‐Gabrielle]
1873.1.28‐1954.8.3。フランスの女性作家。ブルゴーニュ地方サン=ソブールに生まれる。20歳で小説家ウィリーと結婚、パリに移る。1910年に別居、ミュージック・ホールでパントマイムを演ずるなどして、生活の資を得ながら作家としての成長を遂げ、『シェリ』『青い麦』『牝猫』などの作品を残した
工藤庸子[クドウヨウコ]
東京大学教授を経て、放送大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ころこ
44
映画『コレット』に即した晩年に書いた若き日の自伝だと思ったら、具体的な日時がほとんど書いていないというのに戸惑い、表現が直接的でないため文章の意味が単独ではとり辛いという、何とも非現代的な構成にも戸惑いました。これは映画を観るなどして、予め内容を予想していないと到底読み通せないのではないかと思います。本書の見どころは、何といっても多数差し挿まれている若かりし写真と元夫ウィリーとの関係が率直に書いてあることでしょう。ルッキズムと老練な男性による若い女性に対する搾取というかなり際どいテーマではありますが…2021/12/21
ユーカ
16
めっぽう面白かった。1900年、ベル・エポックのパリで一度目の結婚生活を過ごしたコレットが齢60を数えてその頃を振り返る。年上の流行作家の夫に連れられてパリに出てきた若干20歳の田舎娘は、演劇、絵画、文芸といった、ある種享楽的な文化人たちの中に放り込まれ、高級娼婦らとも交流し、「鍛えられ」ていく。超一級の描写に縁どられためくるめくデカダンスは、読んでいて「ちょっと飽きたな~」という瞬間があるのだが、それを察知するかのように次の行には心を掴むようなことが起こる。コレットを捕まえて言うのも何だが、上手い。2023/06/13
Mana
6
映画を見て再読。前に読んだのは大学生の頃で、たしか「シェリ」の映画を見たのがきっかけだったと思う。あの頃はあんまり面白いと思わなかったんだけど、今回は結構面白かった。これは一つには本の嗜好が変わって女性のエッセイを好むようになってきたことと、もう一つはある程度コレットについての予備知識がついたことによると思う。説明とか何もなくて本当に思い出を語るって感じなので、最低限の予備知識は無いと厳しいかな。2019/05/28
nranjen
5
図書館本。再読。手元に置いておきたい本なんだけど…。のたりくらりと語り始めるコレットの老練な文体や、どぎつい女オンナしているところが実は、とても苦手だったのですが、今回再読して、見方が変わりました。コレットは一枚岩ではない。この本は60才に達した女が、30才の自分を描いてみせる際に、入り組んだ自虐、諧謔を混ぜこんでイキって見せたり、ずどーんと本音を語ってみたり、要は技と同時に人間の奥行きを示して見せているかということがわかったのですよ。2019/10/03
芙由
2
最初の夫のゴーストライターをしていた時代を晩年に振り返るエッセイ。自身にも文才があるのにあえて複数のゴーストライターを雇い、詳細な指示を出し卓抜した管理能力を発揮するウィリーの、書くことからの逃避に病的なものを感じる。この人自体が小説になりそうなくらい。2020/10/17