内容説明
人類の孤独の極北に揺曳する絶望的な“愛”を描いて重層的なスケールで圧倒的な感銘をよぶ、衝撃の作家ウエルベックの最高傑作。文学青年くずれの国語教師ブリュノ、ノーベル賞クラスの分子生物学者ミシェル―捨てられた異父兄弟の二つの人生をたどり、希薄で怠惰な現代世界の一面を透明なタッチで描き上げる。充溢する官能、悲哀と絶望の果てのペーソスが胸を刺す近年最大の話題作。
目次
第1部 失われた王国
第2部 奇妙な瞬間
第3部 感情の無限
著者等紹介
ウエルベック,ミシェル[ウエルベック,ミシェル][Houellebecq,Michel]
1958年、フランス海外県レユニオン島生まれ。国立高等農業学校卒業。小説第一作『闘争領域の拡大』で、一躍注目を浴びる。現在フランスでもっともスキャンダラスな話題につつまれた作家である
野崎歓[ノザキカン]
1959年、新潟県生まれ。東京大学大学院助教授(言語情報科学専攻)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
185
久し振りの現代フランス文学。読メ友のfishdeleuzeさんお薦め。一見したところ文学作品には見えないタイトルなので、自分で手に取ることはなかっただろうと思う。なお、タイトルは原題の直訳。ブリュノもミシェルも親に捨てられ、また子どもとの縁も薄い。常に勃起し、女を求め続けるブリュノ。一方のミシェルは、ほとんど性的な関心を持つことがない。1960年代のヒッピーからニューエイジを経て、性と社会や人間性の解放が謳われるが、ここに描かれた主人公たちの人生と共に、それはむしろ愛の不毛を確かめただけであるかのようだ。2012/07/24
やいっち
140
そこにいるのに彼に愛されず、擦れ違っていくあまりにも美人である彼女は、決してこの世に目を向けない彼への不毛の愛の故に彷徨を繰り返し、何度かの堕胎の挙句、絶望的な病を得てしまう。 丁度、その頃になって弟と彼女は再会する。彼女は弟の子供を求める。弟も戸惑いながらも承知する。 けれど、彼女は既に子供を産めない体になっていたのだった。恐らくはそのことを彼女自身が恐る恐る自覚していたに違いない。にもかかわらず彼女はもしかしたらという絶望的な渇望の成就を希ったのだ。束の間のパラダイス。 2011/06/05
まふ
139
1970年代の性開放時代を謳歌した両親を持つ異父兄弟の波乱の生涯の物語。SFに分類されているがリアル感が横溢していた。兄ブリュノは性的コンプレックスに悩まされる教師、弟ミシェルは優秀な分子生物学者だが性的生活になじめない、という設定もさることながら、ヌーディストビーチにおける「過剰な」描写などが読者を辟易させる。「この先は二人ともきっとみじめになるだろうな」と思っていたら、案の定平穏無事な末路を成就できなかった。「読み疲れ」する作品だった。G463 /1000。2024/03/13
buchipanda3
103
なるほど解説にある通り異形な小説。人間の快楽的欲望の即物的描写と生物物理学理論に基づく理性的描写を連ねた文章が独特な味わい。さらに物語の先へと引き付けられたのは単純にブリュノとミシェルの虚勢を張らない姿とそこにある苦しみは実は誰もが心の奥に抱えるもので、その哀感に共鳴してしまうからと感じた。作中にハックスレーの新世界が引用される。それがユートピアかディストピアかは未確定であり、親にも夫にも何にも属さない個(最小単位)の存在であることが解決になるか分からないが、著者が未来への別解を求めたのは確かだと思う。2023/07/24
ふみあき
82
ウエルベック6冊目。比較的初期の作品のようだが、著者のテーマがデビュー以後、恐ろしいくらい一貫していることが分かった。「幸福とは、理性にもとづく実利的慣習とは両立しえない、融合的・退行的な状態と切り離せないもの」だという確信。そして、そこから導かれる大衆消費社会やセックス至上主義、あるいはフェミニズムへの苛烈な批判。同工異曲と言ったら貶めているようだが、著者の小説を連続して読んでいると、実際どの人物・エピソードが、どの作品のものだったか判然としなくなる。ただ、エログロ度に関しては本書が絶頂かもしれない。2023/05/11
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