内容説明
エマ・ウッドハウスは美人で頭が良くて、村一番の大地主のお嬢さま。私生児ハリエットのお相手として、美男のエルトン牧師に白刃の矢を立てる。そしてハリエットに思いを寄せる農夫マーティンとの結婚話を、ナイトリー氏の忠告を無視してつぶしてしまう。ハリエットはエマのお膳立てにすっかりその気になるのだが―。19世紀英国の村を舞台にした「オースティンの最も深遠な喜劇」。
著者等紹介
オースティン,ジェイン[オースティン,ジェイン][Austen,Jane]
1775‐1817。イギリスの小説家。おもに結婚話を題材とした、平凡な日常生活のドラマを皮肉とユーモアをもって描き、完璧な芸術へ高めたと言われる
中野康司[ナカノコウジ]
1946年神奈川県生まれ。青山学院大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
355
この作品が出版されたのは1815年。ワーテルローの戦いの年だが、すなわちオースティンが執筆していた頃、大陸はまさにナポレオンの巻き起こす嵐が吹き荒れていた。ところが、ロンドンからはさほど離れていない、ここハートフィールドは未だ前世紀の世界であるかのようだ。物語の空間は18世紀で時を止めたかのような世界観の中にある。その中で生きるエマの物語は、畢竟いわば閉ざされた世界であり、そこでの人々の動きはそれぞれの思惑を交錯させつつ構成されてゆく。私たち読者は彼らの間に交わされる会話を通して、それを知るのである。2024/03/15
遥かなる想い
205
19世紀英国のハイベリー村が 舞台の のどかな お話である。 ウッドハウス家のお嬢様 エマの人物造形が 巧みで 微笑ましい。職業と地位が 結婚の優先事項だった時代に、せっせと ハリエットの縁結びに 奔走するエマ …エマの個性が 強すぎて、他人が全て 霞んでしまう、この作品 下巻は どこに 向かうのだろう。2018/09/26
のっち♬
142
村の大地主の令嬢エマは青年紳士ナイトリーの忠告を無視して私生児ハリエットの結婚を取り持とうとする。美人で機知と善意に富んでいるが、自信過剰であるために自分の偏屈とお節介が空回りし続けていることに中々気がつかないこのお嬢様、ある意味著者の作品のヒロインの中でも最も共感を得られなさそうな人物像である。しかし、一足飛びにいかない彼女の成長を粘り強く見守る著者の眼差しはその分だけ温かく、雰囲気自体どこか大らかで明るい。ここへ来て著者とヒロインの視点が交錯する柔軟な話法は、更なる飛躍と深みを獲得したように思われる。2017/07/09
星落秋風五丈原
72
【ガーディアン必読1000冊】「エマ・ウッドハウスは美人で、頭が良くて、お金持ちで、明るい性格と温かい家庭にも恵まれ、この世の幸せを一身に集めたような女性だった。もうすぐ二十一歳になるが、人生の悲しみや苦しみをほとんど知らずに生きてきた。」まーどうでしょこの主人公の万能感。もう何もいらないじゃないですか。物語おしまいにしてもいいじゃないですか。でもね。「エマのほんとうの不幸は、何でも自分の思いどおりにできることと、自分を過大評価しすぎることだった。」素直なヒロインをオースティンが創り出すはずないんです。 2019/08/27
みつ
63
夏からこれで4冊目のオースティン。狭い世界の小さな出来事を描くのは変わらないが、なぜか手を伸ばさずにいられない。本作の主人公エマは冒頭で「美人で、頭が良くて、明るい性格と温かい家庭にも恵まれ、この世の幸せを一身に集めたような女性」と描写される。面白いのは彼女自身の恋愛エピソードではなく、愛着を持つハリエットの幸せな恋愛成就を願い、あれこれと策を練るところ。辛辣なナイトリー氏との丁々発止のやりとり、なぜかいけすかないジェインに対する態度、天真爛漫なフランクとの距離感などが織り交ぜられ、下巻への期待も膨らむ。2023/11/26
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