内容説明
夭折の詩人・哲学者ノヴァーリス。その多岐にわたる作品を新しい角度から編む文庫初のコレクション。第2巻は、代表作『青い花』を収録。めくるめくファンタジーと絢爛たるアレゴリーが渦巻く、百科全書的知の饗宴としての長編小説の姿が、永年の読解をふまえた新訳と細心の注解により初めて明かされる。29年たらずの短く濃密な生涯を誌した略伝を付す。
目次
青い花(期待;実現)
ノヴァーリス(フリードリヒ・フォン・ハルデンベルク)略伝
著者等紹介
ノヴァーリス[ノヴァーリス][Novalis]
1772‐1801。ドイツ・ロマン派の詩人・哲学者。本名フリードリヒ・フォン・ハルデンベルク
今泉文子[イマイズミフミコ]
東京大学ドイツ文学科博士課程満期退学。立正大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Gotoran
48
ある夜、青年ハインリヒは夢で青い花の花弁に愛らしい少女の顔を垣間見て、その衝動に駆られて旅に出る…ハインリヒが詩人として、無限なるもの、神秘的なものへの憧れを様々な出会いを通して内的な理解を深めていく旅でもあった。故郷を出たことがなかったハインリヒは、旅の途中で様々な物事を目にし、幾つかの耳にしていく。語られている物語は、どれも美しく幻想的で印象的なものばかりであった。詩的探究が主題の第二部の入り口で未完となるも、掲載の補遺と解説で理解ば深まった。独ロマン派文学代表作品の1つを読んでみた。2020/09/12
iwri
4
今泉訳では初めて。青山訳より読みやすい。注も充実しており、解説や略伝も含めて今泉さんの既出の論考の内容を要約したような、内容豊かなものになっていると思う。ノヴァーリスは確かマイスターを念頭に置いて、教養小説は総合文芸作品だというようなことを言っていたと思ったが、まさにそれを体現する作品だと改めて感じた。2015/05/10
kazu
3
ノヴァーリスにとって大切なのは全体よりも部分ではないだろうか。断章や、日記、花粉など様々な断片が種をまくようであり、芽を出し、どのように成長していくかは実験的である。夢や逸話が語られ、物語としての筋よりも大きな意味を持つのではないか。とすると詩が主役であり、散文は脇役なのだろうか。しかし、補遺を読むとそう言い切れるものでもないのかもしれない。断片的な思索から生みだされる物語は糸を紡ぐような繊細さを感じる。ノヴァーリスは長編小説に大きな意味を、人生を見出していたようであり、未完であるのはやはり悔やまれる。2018/06/29
Auristela
3
バシュラールがこれは青い花ではなく赤いのだと言ったそうだけど、ではガルシンの赤い花はどうだろう。アルクトゥールスのメルヒェンや徹底的に天上的な展開が醸し出す不思議な観念小説でした。志半ばに潰える情熱は嫌いではないな。2017/05/31
つだしょ
1
ノヴァーリスは29歳で夭折したドイツのロマン派の天才的作家とされる。自身の書簡に、「全体は詩[ポエジー]の礼讃となるはずです。[p344]」とあるように、全体は著者自身の詩作をめぐるもの。ロマン派ときいて納得の、隅から隅まで大袈裟な表現。夢の体験、父や教師?との対話、マティルデとの愛、また途中で挿入される物語(登場人物が話し出す)で構成される。2013/08/29