内容説明
一葉の作品を味わうとともに、詳細な脚注・参考図版を多数収録することで一葉の生きた明治という時代を知ることのできる画期的な文庫版小説集。いわゆる“奇跡の十四ヶ月”時期の代表作とそこに至るまでの初期作品を主として収録。資料篇として鴎外、露伴、緑雨、高山樗牛らの一葉評も付す。
著者等紹介
樋口一葉[ヒグチイチヨウ]
1872‐1896。東京の府庁構内長屋に生まれる。本名奈津。幼いころ草双紙を読み、和歌を学んだ。十九歳のとき半井桃水に師事して創作を始め、第一作「闇桜」、ついで「うもれ木」によって注目される。下谷龍泉寺町で荒物・駄菓子屋を始めるが失敗。再び創作に専念し、「にごりえ」「十三夜」「たけくらべ」などを次々に発表。二十四歳にして肺結核で死去
菅聡子[カンサトコ]
1962年福岡県生まれ。お茶の水女子大学大学院博士課程修了。博士(人文科学)。お茶の水女子大学文教育学部助教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Gotoran
51
明治に短く輝いた樋口一葉。文語体で読み辛さを感じつつも、註釈を頼りに、何とか読了。有名な『たけくらべ』『にごりえ』他10篇を収録。いずれも、封建社会が色濃く残る明治に社会の底辺で苦しく貧しく、それでも一生懸命に生きる女性の苦悩が描かれる。運命に翻弄される女性達の哀しい物語。例えば『大つごもり』のお峰・・『うつせみ』の雪子・・『にごりえ』の(遊郭で働く娼妓)お力・・『わかれ道』のお京・・『たけくらべ』の美登利、『われから』の美尾・・。・・資料編(鴎外、露伴、斎藤緑雨、樗牛らの一葉評)も一読の価値あり。2015/06/04
井月 奎(いづき けい)
33
「わかれ道」を再読しました。天涯孤独の吉三は、姉のように慕うお京と引き離されます。その別離に吉三は、お京にねだって口にした餅の甘さすらつらく思い出すことになるのでしょう。彼の乱暴狼藉は自らへの打擲でしょうが、お京がそれを甘えへと変えました。痛みはまるで頭を撫でられているかのような心地になったのです。わかれ道とは、吉三のお京との別離のことではなく、彼がもう少し後に、お京の悲しみを知ったときにそれを胸に秘めることのできる大人へと向かうのか、甘い憐憫を抱くしかない子供でいるのかの「わかれ道」だと思うのです。2016/04/29
松本直哉
19
大晦日までの納品を終え、支払うべきものを支払い、末日締の請求書を書いて、ああこれで今年もなんとか年が越せる(イマココ)と毎年思いながらいつの間にか18年の吹けば飛ぶような零細自営業者の私にとっては身につまされる「大つごもり」だった。セリフのカギカッコがなくて地の文との区別がつかないのが新鮮というか前衛的に感じた。 2016/12/31
アリス
14
図書館本。 たけくらべ・にごりえが気になったので読んだ。2024/03/08
不見木 叫
10
解説付きなので分かりやすい。「大つごもり」、「闇桜」、「にごりえ」が好きな話です。2022/05/30