内容説明
「貧乏はするもんじゃありません。味わうものですな」その生き方が落語そのものと言われた五代目古今亭志ん生がこの世を去って三十有余年。今なお落語ファンを魅了してやまない師匠が、自らの人生を語り尽した名著。父のこと、少年時代、売れなかった極貧時代、なめくじ長屋の真実、関東大震災、三道楽、満州慰問、息子たち(金原亭馬生、古今亭志ん朝)のことなど…志ん生伝説のすべてがここにある。
目次
ごあいさつ
明治愚連隊
青春旅日記
震災前後
びんぼう自慢
三道楽免許皆伝
生きる
真打一家
著者等紹介
古今亭志ん生[ココンテイシンショウ]
1890年、東京神田に生まれる。本名美濃部孝蔵。初代小円朝門下の朝太をふりだしに1939年、5代目志ん生を襲名するまでに改名16回。若いころは酒と奇行で知られ、戦後は実力、人気ともに落語界の第一人者となる。落語協会会長をつとめ、紫綬褒章、勲四等瑞宝章受章。1973年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ぐうぐう
38
古今亭志ん生にとって『びんぼう自慢』は二作目の自叙伝である。66歳の時に出した『なめくじ艦隊』が最初の自叙伝で、その8年後に出たのが『びんぼう自慢』。それを79歳で大改訂、つまりブラッシュアップしたのが本書となる。自伝なのだから『なめくじ艦隊』と重なる記述も多々あるものの、79歳ゆえの達観、あるいは開き直りのような心境が、語りに味を増している。15歳にして吉原や賭場に顔を出し、酒を浴びるという破天荒さ、関東大震災時には大きく揺れたと思いきや、(つづく)2023/08/29
ちはや@灯れ松明の火
28
なんでお前さん酒ばっか呑むんだって、そりゃ生きてくため、芸をするためで、芸で稼いだ金は酒に注ぎ込んじまうもんだから貧乏は当たり前に決まってら。変人だらけの噺家稼業、日課のような質屋通い、蚊やなめくじが幅利かせる長屋暮らし。筋金入りの貧乏もいつか話のネタになる。十六ぺん名前を変えて、家賃踏み倒しては引っ越して、酒で何度もしくじって。おかげで説得力も臨場感もお茶の子さいさい。こんな旦那に連れ添い続ける女房に礼なんて言えやしないから『替わり目』なんて演目があって、家族が元気に揃ってりゃ貧乏だって自慢になるのさ。2021/12/21
hippos
23
破天荒とはこういうことを言うのだろうか?凡人にはとても理解できない。それにしてもかの時代、社会全体が寛容なのには驚く。今の時代であれば袋叩きに合うだろう。同じ国の同じ人種のこととは思えない。2024/09/10
おおた
23
「こんなにいい加減に生きてていいんだ!」学生時代にこれほど感銘を受けた本もないけど、おかげですっかりちゃらんぽらんな中年になってしまった。感銘を受けた頃は酒をほとんど呑まなかったので、こうして日本酒が林立する部屋に暮らすようになると「大人って本当にダメだな」と思いつつ、志ん生の一本気な心意気は逆立ちしたってかないっこない。それがわたしとの決定的な差となってしんみりする。山梨の奥地に引きこもって下足番をするおじさんに稽古を付けてもらう話が好き。これは須く読むべき名著です。2018/02/04
やまねっと
22
ナメクジ艦隊と被るものもあるが、いやはやすごい放蕩ぶりである。何しろ金が入ると右から左。嫁の財布からくすねて、呑む、打つ、買うに使う。真打になっても碌な着物ひとつ持っていなかったなんて、なんて人だと思った。 なんといっても、お上さんが素晴らしい人だ。普通の人じゃないよ。包容力があるというかなんというか。一度この人と決めたなら添い遂げるというのは嫁の鑑だよ。 戦後の落語界を支えたのはやはり志ん生もその1人だし、馬生、志ん朝を育てたのはこの人だから、大名人だ。CDで一度聴いてみてください。面白いから。2024/07/17