ちくま文庫
夢遊の人々〈下〉

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  • サイズ 文庫判/ページ数 669p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784480420077
  • NDC分類 943
  • Cコード C0197

内容説明

下巻は第3部「1918年」を収録。下巻に至って、多面的な構成、実験的性格が顕になる。1918年は、第1次大戦の終結の年。ドイツ帝国は崩壊へと一気に突き進んで行く。混乱し錯綜する時代像を、詩や戯曲、哲学的論考など、様々な文章形式を駆使し、従来の小説観を突き破る斬新な手法で活写。ヘッセやT・マンなど、文壇に衝撃を走らせた。舞台は、ドイツ西部戦線後方の地方都市。第1部や第2部の主人公など、過去の登場人物たちも時を隔てて登場。多彩な人物が織りなすドラマは、一大曼荼羅図。「夢遊」する人々に、果たして「覚醒」はあるのか―。附録に、ブロッホの文学観を知る一助として、講演「長編小説の世界像」を収録。

著者等紹介

ブロッホ,ヘルマン[ブロッホ,ヘルマン][Broch,Hermann]
1886‐1951。オーストリアの作家。ユダヤ系の富裕な紡績工場主の長男としてウィーンに生まれる。父の工場を継承、ウィーン文化全盛期の1910‐20年代を財界人として活躍。だが大恐慌(1929)の直前、工場を売却し、40歳を過ぎて作家生活に入る。時あたかもヒトラーの台頭期。その動向を逸早く「典型的な現象」として認識し、「全体小説」論を展開。時代精神に肉薄したその作品では、分析力、構想力の圧倒的な力量を示した

菊盛英夫[キクモリヒデオ]
1909‐2001。富山県生まれ。東京大学独逸文学科卒業。中央大学教授、東京大学、慶応義塾大学などの各講師を歴任。ドイツ文学関係の著訳書多数
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

syaori

54
第一次大戦下が舞台の3部では、登場人物たちの孤独と不安はさらに高まっているように思います。ここで描かれるのは、古い西洋的な世界の崩壊。実証主義が登場し一神論的な世界観が崩れるとともに教会や因習などの共通の価値体系も崩れ、「まだないものと、もはやないもの」との間に立つ、寄る辺ない現代人の姿。そして「まだない」新しい価値に至るには「人間の生は十分では」なく、「誰もそこへゆき着くことはできはしない」。作者は何と冷厳と現代の不安の一面を切り取ってみせたことか、たとえそこに自由の輝きが、恩寵の光が差すのだとしても。2018/12/14

kero385

16
第3部「ユグノオ あるいは即物主義 1918年」は、これまでの主人公達が登場し第3部の主人公ユグノオと対峙する。さらに主要物語の時間軸や場所での独立したいくつかのエピソードと、「ベルリンの救世軍少女の物語」という全く別の物語と「価値の崩壊」という論考がそれぞれ節に分けられて挿入される。それらは、三人称の記述を中心とし、一人称の語り、詩、アフォリズム、戯曲、哲学的エッセイと様々な形式で物語られる。本来なら混沌とした感じを受けようが、それぞれが比較的短い同じくらいの文量の節で語られるため、あまり違和感がない。2025/04/13

かんやん

11
読み終えて、呆然自失。あまりに、厳粛、悲痛、そして観念的な第三部。第一部、第二部の主人公たちが衝撃的な変貌を遂げて合流し、不吉な予兆と不安をはらみながら、カタストロフへ至る。ほとんど神秘的といっていいほどだ。しかし、何か超越的なものが姿を現すわけではない。むしろ徹底的に不在なのだ。真理と価値はもはや一致せず、価値体系は崩れ去り細分化され、人々は孤独の殻に閉じこもり、世界は統一を失い混沌としてる。「人間ならば誰しも知っていることだ…人間の生は十分でないことを…誰もそこへ行きつくことができはしない」2016/12/16

Mark.jr

6
Robert Musilと並びオーストリアのハプスブルグ帝国時代を代表する作家、Hermann Broch。本書はそのデビュー作で、1000ページを超えるボリュームもさることながら、小説が進むにつれて伝統的リアリズムを解体吸収していく展開など、読むことでしかそのダイナミズムを味わえないこの作品は、個人的にはプルースト、ジョイスに連なる文学の王道に位置する傑作だと思います。2022/10/10

nyu_omemekusisi

3
文学・哲学的引用:プラトン、シラー、カント、ゴーゴリ『死せる魂』、シェリング(銃から発射された弾丸のように世界に絶対者を投影する)、ヘーゲル(特に矛盾を用いた推論や弁証法)、カトリックとプロテスタント(ピューリタン、カルヴァン派)の対立 パーゼノウ家、ベルトラント、エッシュ、ユグノオ バラバラなストーリーを大規模な事件(第一次世界大戦を終わらせたドイツ革命)によって関連付ける手法はリチャード・パワーズのはしりとも言えるかもしれない 登場人物は誰もがなんの目的でなにをしているのかもわからないがそれを自覚して2024/07/19

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