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ちくま文庫
夢遊の人々〈上〉

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  • サイズ 文庫判/ページ数 668p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784480420060
  • NDC分類 943
  • Cコード C0197

内容説明

偉大な作家たちは、時代に深く沈潜、その時代の「精神」を捕捉し、作品に封じ込めようと格闘してきた。20世紀前半、その努力は頂点に達し、巨大な作品が群生、雄大な山脈となって現れたのだった。仏語圏のプルーストしかり、英語圏のジョイスしかり…。そして独語圏にも驚異的な膂力を持った作家が現れた―名はヘルマン・ブロッホ。ヒトラー登場へと続く時代の危機を、その淵源にまで遡り省察。本書は、その独創的な省察、「価値崩壊」論を背景に、時代風俗の中で“夢遊”する人々を活写する。雄大な構想、精緻な分析、斬新な描写手法は、圧倒的だ。読者は究極、「時代精神」の確かな彫像を見ることだろう。「全体小説」を唱えた巨匠の一大金字塔。

著者等紹介

ブロッホ,ヘルマン[ブロッホ,ヘルマン][Broch,Hermann]
1886‐1951。オーストリアの作家。ユダヤ系の富裕な紡績工場主の長男としてウィーンに生まれる。父の工場を継承、ウィーン文化全盛期の1910‐20年代を財界人として活躍。だが大恐慌(1929)の直前、工場を売却し、40歳を過ぎて作家生活に入る。時あたかもヒトラーの台頭期。その動向を逸早く「典型的な現象」として認識し、「全体小説」論を展開。時代精神に肉薄したその作品では、分析力、構想力の圧倒的な力量を示した

菊盛英夫[キクモリヒデオ]
1909‐2001。富山県生まれ。東京大学独逸文学科卒業。中央大学教授、東京大学、慶応義塾大学などの各講師を歴任。ドイツ文学関係の著訳書多数
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

syaori

55
物語の始まりは近代化の進む19世紀末のドイツ。3部構成で、各部の間には15年の歳月があり、それぞれ時代の精神を表す人物が主人公となっています。1部も2部も、体現するものは違っていても主人公に死と孤独の影が差しているのが印象的でした。これまでの価値が揺らぎ、自分の寄って立つ所が分からない。教会も因習も既に絶対ではなく、それに伴って募る存在の不安、愛の無縁。現実の何が確かなものなのか、世界の秩序はどこにあるのか。不安と幻滅のなかで「安全な」世界を夢見てまどろむ「夢遊の人々」。彼らはどうなってゆくのでしょう。2018/12/12

kero385

14
「夢遊の人々」は、文体も主人公も時代も場所も異なる三つの小説で構成されているけれど、やはり一つの小説であるので、全体の感想は下巻を読んでから。上巻では印象に残る場面をメモしよう。第一部「パーゼノウ あるいはロマン主義 1888年」では、主人公ヨアヒムと出自不明の女性ルツェーナが初めて愛し合う場面の描写、極めてエロティシズムに溢れて、ブロッホ凄い!と唸ってしまった。それとは反対に同じ貴族階級のエリーザベトに求婚するシーンは、空々しく痛々しい。2025/04/08

かんやん

11
この作家は主人公たちの行為や思考だけでなく、非論理的な彼らの妄想を描く。妄想が現実を歪めてゆくのか、妄想でしかこの現実を捉えられないのか。「遠方にあって妻を恋いこがれるとか、またただその幼年時代の故郷をいちずにあこがれる男は、夢遊の開始点に立っている」地上的なものでありながら、憧憬の持ち主である人間は、信仰を持つことも許されないまま、救済を待ち望む。ただじっと待つのではなく、ジタバタ足掻くのだ。「何も知らされず、途方に暮れ、意味もなく地上をさ迷い、無のなかに自らを失わないように」夢遊の描写に圧倒される。2016/12/05

ディヴァイン

3
目の眩むような群像劇。3つのパートでそれぞれに主要な登場人物を配して描かれる。まだ、ブロッホの作品にしては読みやすくて長いですが言葉を一通り追えば、この世界を楽しめると思います。2009/06/28

abaoaquagga

2
上流階級に生まれた軍人が、令嬢とホステスとの間で葛藤する「ロマン主義」の第一部。孤児として育った衝動的な青年が、食堂のおかみとサーカスの女性との間で揺れ動く「無政府主義」の第二部。長大かつ壮大な構成とは裏腹に、登場人物は少なく、出来事はこぢんまり。上巻では前衛性がまだ牙を剥いていないのもあって普通の小説として読めるが、これはブロッホが意図したものだそう。セクシーレスリング興行のための金策に走るくだりはちょっぴり可笑しい。第二部の、無軌道な行動の度にじわじわ窮屈になる感覚に、うっすらとカフカが重なった。2024/02/23

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