目次
小説灰燼
小説黒潮
順禮紀行
みゝずのたはこと
勝利の悲哀
天皇陛下に願ひ奉る
謀叛論(草稿)
徳富蘆花(神崎清)
蘆花と共に(徳富愛子述・神崎清記)
解題(神崎清)
年譜(稻村徹元編)
參考文獻(稻村徹元・山口美代子編)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Mayuzumi
25
「ほゝゝゝ、明るい、明るい」西南戦争に敗れ、身ぐるみ一つで帰ってきた末子を、家族は家名のため、自害をさせる、その日の夜も明けぬうちに、行灯へ飛沫く我子の血。「茂、堪忍してお呉れ、阿母(おつかさん)が乳呑むだ昔の茂になつてお呉れ」母はその罪悪に堪えきれず、暴風の深更に発狂、幻影に逐われ、行灯を倒す。屋敷は業火を呼ぶ。それは建前・外聞の襞の先、日本列島の底にひそむひとつの音を、得体の知れない禁忌の声を、民族の血に、呼び戻すみたいだ。「ほゝゝゝ、明るい、明るい。さ、茂、爆竹(どんどや)をしましやう、爆竹を」2017/05/04