感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
115
このアンソロジーには、言葉がどのように使われているのかを考えさせられる作品が数多く収められています。日本人の書いた作品は、様々な詩や言葉をイメージさせてくれかなりわかりやすいのですが、海外の作家のものはコミュニケーションでの言葉のやり取りが問題となっていると感じられました(イヨネスコの授業など)。またポーの作品では、日本語での「う」という活字がなくなって「×」で表してる「×だらけの社説」が楽しめます。2018/10/20
帽子を編みます
64
読みごたえがありました。ことばの可能性が広がる一冊です。マザー・グースに始まり、太宰治から井伏鱒二など緩く繋がりをもちながら気づくと驚くべき着地点にいました。手紙文、ベルナールのなんとかページを稼ぐような感じ、樋口一葉の候、申候が続き耳あたりは良いのに述べている内容は少しのもの、もし改訂版が出るならビジネス文の短編も入れて欲しいところです。武田百合子、斎藤隆介あたり、聞き書きが上手いです。ポーの短編でOが抜ける話と三好達治が「千曲川旅情の歌」でOの響きがもたらす効果を述べるのも不思議に呼応しています。2021/11/19
メタボン
24
☆☆☆ 言葉そのものについて考えさせられる作品が多い。全編津軽の言葉で語られる太宰治「雀こ」は音読が気持ち良い。ラードナー「アリバイ・アイク」は何でも言い訳する野球選手が面白い。イヨネスコ「授業」の最後は女生徒を殺してしまう嚙み合わないやり取りがシュール。猿に言葉を教えるがようやく発した言葉は末期の「ご主人さま、水を」というルゴーネス「イスール」。失語症や言葉の過剰を見事に映像で表した寺山修司「さらば箱舟」。新聞で「う」という活字がなくなってしまい×に置き換えてしまうポー「×だらけの社説」。2018/05/20