出版社内容情報
〈無知〉から〈洞察〉へ。キリスト教文明とイスラーム文明との関係を西洋中世にまで遡って分析し、読者に歴史的見通しを与える名講義。解説 山本芳久
内容説明
正反対の原理や原則に基づいた社会に対し、恐怖と不安に満ちた見方に始まり、共通点の発見を経て芽生えた理解の可能性。だがそれは、遂に実を結ばないまま近代を迎えることとなる…。7世紀から宗教改革期まで、ヨーロッパの人々のイスラーム観はどのように変遷していったのか。英国を代表する中世史家サザンが、時代を画す出来事や思想家の言葉から鮮やかに描き出す。現代世界が抱えている問題を考えるにあたり、本書が語る中世の経験は今なお示唆するものが大きい。両文明の関係を捉えなおすために、何度も耳を傾けたい名講義。
目次
第1講 無知の時代
第2講 理性と希望の世紀
第3講 洞察の時
著者等紹介
サザン,R.W.[サザン,R.W.] [Southern,Richard William]
1912‐2001年。英国北部ニューキャッスル・アポン・タインに生まれる。英国を代表する中世史家。オックスフォード大学チチリ講座教授、同大学セント・ジョンズ・カレッジ学寮長、王立歴史学協会長等の要職を歴任
鈴木利章[スズキトシアキ]
1937年、京都府生まれ。1960年京都大学文学部西洋史学科卒、65年同大学院西洋史専攻博士課程満期退学。神戸大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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バルジ
2
中世ヨーロッパにおける「イスラム教」理解の変遷をたどる一冊。大家が一語一語慎重に言葉を選びながら語る講義が元なので、正直全く初学者向きではない。こうした難解な内容でありながら、その実本書の構成はシンプルである。偏見によるイスラム理解が跋扈した「無知の時代」。テキストの批判的解釈から僅かながら理解が進みイスラム教やキリスト教の垣根が超えられるという希望を持った「理性と希望の時代」。その楽観的な希望は成就しなかった「洞察の時代」に分かれる。個人的にモンゴル帝国のキリスト教・イスラム教VS仏教の論争は面白い。2020/02/11
みこ
0
人々は分かりづらい物事については真摯に向き合うよりも、まずは自分の理解しやすいストーリーにて把握しようとする性質がある。同著で指摘されている無知の時代において、多様な誤解はそういった背景から生まれてくるものであろう また、ヨーロッパ・キリスト教社会においては自分たちが絶対であっただろうが、イスラームやモンゴルの襲来により、自分たちが世界の一部分でしかないことに自覚したとされていた。これも、「比較しなければ文化は理解できない」ということの典型例であろう 上記のことを改めて再確認できた2023/02/25
(ま)
0
読書メーター600k頁 中世西欧人のイスラーム観の変遷 無知蒙昧の空想に偶に光が差し相互理解の機運が兆すが最後は閉ざされて・・・ローマ教会の腐敗状況の反映のようにも思えるが、お互い同じ神なのだから、神よ、罰し給え、と祈っても神様は困ると異教徒は思う。2021/06/15
茅野
0
簡潔でわかりやすい。概要を掴むにはいいかも。解説のより詳しく知るための読書ガイドも有り難い。2020/06/20
アルビーノン
0
中世キリスト教世界においては、イスラームに関心を寄せる場合であっても、それは彼らをいかに改宗させるか、またはキリスト教内部の腐敗を是正する契機にするといった観点からのもので、イスラームそれ自体を理解しようと努め、共存を試みるといったような視点はなかったようだ。また、この時代の両者の関係を考えるにあたっては、モンゴルも重要なファクターになってくるとのこと。2020/04/26