内容説明
一語一語、その語意について豊富な用例をもとに粘り強く吟味する―。この基本姿勢に貫かれながら、古典文(主に奈良・平安期の作品)を正確に読み、親しむための基礎知識を詳述したのが本書。助動詞、助詞、敬語を中心に、個々の用例の置かれた文脈への丁寧な読み込みとともになされる解説は、優れた文学者による良質な注釈書のような趣をもつ。作品を読み進める持久力も涵養されることから、学習者の絶大な支持を得た往年の名参考書。
目次
第1章 助動詞(る、らる;ゆ、らゆ(上代)
しむ、す、さす
す(上代)(四段活用) ほか)
第2章 助詞(格動詞の「が」「の」;格助詞(?)の「い」
格助詞及び接続助詞の「に」
格助詞の「へ」 ほか)
第3章 形容詞
第4章 動詞
第5章 敬語としての動詞及び補助動詞(尊敬語;謙譲語)
著者等紹介
松尾聰[マツオサトシ]
1907‐97年。東京に生まれる。東京帝国大学文学部国文学科卒、同大学院(旧制)修了。学習院大学名誉教授。文学博士(東京大学)。専門は平安時代の文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アメヲトコ
8
2019年9月文庫化、もとは73年刊。文庫とは思えないほどの大部の書ですが、古文を読む人にとっては座右におきたい一冊。「入門」とは冠されていますが、基本的な古文の文法用語の理解を前提としているので、高校の古文を一通り習った人が改めて通読すると、こういうことだったのかと随所で目から鱗が落ちます。本書の特長はそれぞれの助動詞や助詞などの用例を古典から丹念に拾い上げて検討していることで、まだパソコンやデータベースなどもなかった時代の作であることを思うと著者がかけたであろうすさまじい労力に圧倒されます。2019/09/29
toiwata
4
文法というよりは、用例集であるとの感想を持った。個々の説明について具体的な根拠の記述は非常に圧縮されており、正直、ついて行くことは難しい。1970年代当時の大学受験生は普通にこなしていたようなので世情の隔絶と言うしかない。あと、小田勝國學院大學教授による解説に、さりげなくすさましきことが書いてあり驚いた。”-まだ国文学と国語学はぴったりと寄り添っていた。本書はそんな時代の空気を今に伝えている。” p. 659 (ラテン語の文法から切り離された神学研究があり得るだろうか、という意味での驚き。)2020/04/26
ヤベ
3
時間があるのでノートをとって勉強しながら読んだ。この本は内容が非常に詳細でまじめに取り組んだのは地獄の苦しみだったが読後の達成感は強かった。古典文法がほんの少し体得された。2022/10/30
kinkswho
2
古文の読解に必要な助動詞、助詞、敬語について単語レベルで網羅的に説明している。 ここまで一つ一つの用語について豊富な用例を使って解説している参考書も珍しいのではないか。 特に上代に使用された用語も比較的詳しく取り上げているので、万葉集・古事記・日本書紀の読解にも役立つ。 全編読み通すにはボリュームが多いので、古典を読む際のリファレンスとして使用するのが良いかも。2020/04/03