内容説明
現代のグローバル化や保護貿易/自由貿易を考えるには、まずその起源を知らねばならない。近年の考古学的発見が明らかにしたように、人類はその黎明期から多種多様な商品を交換してきた。交易は、人間社会が繁栄するための欠かせない土壌であり、ときに諸文明を結びつけ、ときにさまざまな軋轢や凄惨な衝突をも巻き起こす。だが、交易なくして人類はない。知られざるその歴史を、エピソード豊かに圧巻のスケールで描き出した通史。下巻は、オランダ、イギリスなどのヨーロッパ新興国が世界市場に本格的に進出する17世紀から、グローバル化への反発が高まりを見せる21世紀のはじめまで。
目次
第8章 包囲された世界
第9章 会社の誕生
第10章 移植
第11章 自由貿易の勝利と悲劇
第12章 ヘンリー・ベッセマーが精錬したもの
第13章 崩壊
第14章 シアトルの戦い
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
66
下巻はコロンブス以降現代まで。オランダとイギリスの東インド会社の丁々発止など、期待通りの面白さ。だが、リカードの比較生産費説が登場するあたりから、ちょっと本筋を外れてしまったようだ。もちろん実際の交易の歴史と、国際貿易理論はコインの裏表ではあるのだが、近代の貿易理論が「国家」を単位に組み立てられているのに対し、実際の交易は国家が単位とはなっていないため、色々と齟齬を感じるのだ。また19世紀の植民地支配、さらには20世紀の東アジア(特に日本)がすっぽりと抜け落ちている。アメリカの学者が書いた欧米中心史だな。2023/06/15
ゲオルギオ・ハーン
28
下巻は貿易範囲、取扱量・種類の拡大もあり欧米を中心に幅広くカバーしている。『技術革新や貿易範囲の拡大は近年急速に進んだものではなく、古代からの積み重ねである』という本書のテーマがよく分かりました。技術の変化についても手を抜かず、調べて概要を書いているので読みやすかった。段々と歴史学から国際経済学といった内容に移り変わっているのも著者ならではだと思いました。広く浅くカバーという感じなので気になるところは他の本などで調べていきたいと思います。2022/08/12
Shin
22
上巻からしばらく間が空いてしまったけど、下巻も変わらず面白かった。大航海時代から東インド会社の時代となり、交易は組織化され、その過程で奴隷貿易などの悲劇を起こしてきた。それでもなお、グローバリゼーションの流れは止まることなく、自由貿易vs保護主義のこんにちまで続く論争を繰り返しながら世界の隅々までをネットワークに取り込んできた。そのマクロな歴史を概観すると、コロナウィルスだったりBLM運動だったり炭素関税だったりといった現代的テーマも、それぞれの意味合いが深く理解できる気がする。2020/07/01
ta_chanko
11
原則的に、自由貿易は地域内格差を拡大させ、途上国を豊かにし、先進国の成長率を低下させる。個人個人で見ればエレファント・ノーズのグラフが示すように、先進国と途上国の富裕層・途上国の中間層が豊かになり、先進国の中間層以下は貧しくなる。自由貿易=グローバル化により既得権益を脅かされる人々は、いつの時代も保護貿易を求める。でも実際には関税を高めるよりも、失業者などへの補償を手厚くした方がコストはかからない。意外にも保護貿易の時代の方が、各国の経済は成長していた。米中貿易戦争の行方はいかに?2019/12/09
穀雨
8
大航海時代に至る世界の一体化を論じた上巻に続いて、砂糖、綿、コーヒー、茶、奴隷など、代表的な近世の貿易商品がエピソード豊かにつづられている。近現代の部分はそれに比べるとやや尻すぼまりな印象だが、ストルパー・サミュエルソンの定理は知らなかったので勉強になった。著者も指摘している通り、グローバル化とそれへの抵抗は何世紀にもわたって手を変え品を変え続いてきたことがよくわかった。2025/01/21