内容説明
なぜ美しいものを作ろうとも思っていない名もなき工人が、時として驚くべき美を生み出すのか。その理由を解き明かそうとした柳は、『無量寿経』にある「すべてが美しい世界をつくる」という阿弥陀仏の誓いに出会い、はたと気づく。ものの美しさは、この宗教的救済によってもたらされていたのだと。そして、美しいもの=救われたものを日本民藝館に陳列し、人もものも、すべてが救われる「浄土」が現に存在することを、人々に伝えようとした。阿弥陀仏の本願と美を結びつけ、仏教の再構築を構想した柳宗悦。この稀有な思想家の核心に迫った著者初期の代表作を、増補して文庫化。
目次
第1章 形から心へ
第2章 永遠の今を求めて
第3章 美への展開
第4章 美の宗教
第5章 “世俗化”のなかで
補章 「美の菩薩」をめぐって
著者等紹介
阿満利麿[アマトシマロ]
1939年生まれ。京都大学教育学部卒業後、NHK入局。社会教養部チーフ・ディレクター、明治学院大学国際学部教授を経て、明治学院大学名誉教授、連続無窮の会同人(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ryohjin
5
著者曰く柳宗悦の『宗教論が美の世界に展開されていく過程に焦点を合わせて執筆』された本です。伝統を積み重ねてきた工芸のなかに美を見いだし、仏教の光をあてて民芸の思想につなげていく過程を、興味深く読みました。柳宗悦自身の文章を読んで、この世界にさらに分けいってみたいと思いました。2022/04/11
緑虫
1
★★★☆ 民芸の思想を柳宗悦の宗教哲学者という側面を踏まえて論じる。美の宗教(人間にとって宗教的感動は必要なものである。しかしながら、現代は形のないものは信奉されない。ならば、美術品を信奉対象とすべし)、悪人正機(善人なほもて往生をとぐ、いはんや悪人をや)と民芸思想の相同など。2022/11/30
S
0
柳宗悦に興味があって手に取ったが、(最後にも書いてあるが)その伝記や仕事の解説ではなく、思想や活動の背景にある宗教思想(浄土宗)を見てとり、その視点から柳宗悦を捉える(むしろ、近現代における宗教論がテーマである)。深く考察されていて面白い部分もあるが、柳宗悦の仕事の前提知識が足りていないので、評価はできず。2020/09/06