内容説明
権力の集中によって「国家」が成立していくルネサンス期イタリア。そこで生じる不穏な政治・社会情勢は人々に緊張感を与えつづけたが、そのことがかえって人間の倫理観・宗教・社会・国家についての思考を深化させ、かくして個性的な万能人が輩出し、他に類を見ない陰翳にとんだ豊饒な文化も生じたのである。稀代の歴史家が膨大な史料をもとにイタリア・ルネサンスの全体像を活写し、時代推移的な叙述ではなく、歴史的諸現象を横断的に精察することによって、近代ヨーロッパ文化の原型をあぶりだす。下巻は「世界と人間の発見」「社交と祝祭」「習俗と宗教」を収録。
目次
第4章 世界と人間の発見(イタリア人の旅行;イタリアにおける自然科学;風景美の発見 ほか)
第5章 社交と祝祭(身分の均等化;日常生活の外面に現われた洗練;社交の基盤としての言語 ほか)
第6章 習俗と宗教(道徳性;日常生活における宗教;宗教とルネサンスの精神 ほか)
著者等紹介
ブルクハルト,ヤーコプ[ブルクハルト,ヤーコプ] [Burckhardt,Jacob]
1818‐97年。スイスの美術史家・文化史家。ベルリン大学で、歴史家ランケと美術史家クーグラーに学ぶ。1858年から35年にわたってバーゼル大学教授として歴史学、美術史を講じる
新井靖一[アライセイイチ]
1929年生まれ。早稲田大学名誉教授。専攻、ドイツ文学・西欧文化史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Fumoh
2
あとがきを読む限り、この書に「哲学、経済学、社会学、美術的な」観点が存在しなかったことは、当時から言われていたようで、ブルクハルトもそれを認めているようです。わたし自身が感じたことは、ブルクハルトは文化史という点では精力的な研究をしていたようですが、彼は哲学という観点を持っていないのは本当だなと思いました。哲学の変遷について文化史の面から論じることはできましょうが、ブルクハルト自身に何らかの哲学精神があったわけではないと思いました。それゆえに取ることのできた学術的態度もありましょうが、それが無い故に全体的2025/04/04
lendormin
2
「文化」がタイトルだけあって、15、6世紀のイタリア社会、色々な階級の人々、色々なジャンルの文化が話題に上っている。個人的には、4章の風景美の発見や伝記文学の発展、国民と都市の性格描写等々、当時の人々がそれまでになかったであろう世界と人間を発見していくところの描写が読みごたえを感じた。古典らしく、全体的に格調が高く、風情がある。 各章のテーマは以下の通り 上巻 1章 精密な構築体としての国家 2章 個人の発展 3章 古代の復活 下巻 4章 世界と人間の発見 5章 社交と祝祭 6章 習俗と宗教2020/01/12
てり
1
下巻はやや俗っぽい人間の営みについて様々描かれており、より面白く読める。当時のイタリア人のありようが浮かび上がってくるようで、なんというか著述のパワーを感じる。いつかまた手に取りたい。2023/02/11