出版社内容情報
明治期以来、多くの人々に愛読されてきた文語訳聖書。名句の数々とともに、日本人の精神生活と表現世界を豊かにした所以に迫る。文庫オリジナル。
内容説明
明治期に出来上がって以来、一世紀以上にわたり愛読されてきた文語訳聖書。格調が高く、歯切れのよい翻訳は、文学はもとより、日常の日本語にいたるまで強い影響を与えた。本書は、キリシタン時代にさかのぼって文語訳成立の経緯をたどった後、名著をはじめ、多岐にわたる作品のなかで聖句や名句がどのように用いられてきたのか、言語文化へのはたらきを見ていく。日本人の精神生活と表現世界を豊かにした源泉へと読者をいざない、いまだ色あせることのない言葉の輝きを伝える。
目次
序章 文語訳聖書の魅力
第1章 文語訳聖書の成り立ち(キリシタン時代;開国前の海外訳 ほか)
第2章 修正訳と改訳ほか(新約聖書の修正;新約聖書の改訳 ほか)
第3章 名著にみる文語訳聖書(内村鑑三『基督信徒の慰』(警醒社書店、一八九三(明治二六))
山室軍平『平民之福音』(救世軍日本本営、一八九九(明治三二)) ほか)
第4章 文語訳聖書の名句と用例(新約聖書の名句と用例;旧約聖書の名句と用例)
著者等紹介
鈴木範久[スズキノリヒサ]
1935年生まれ。立教大学名誉教授。専攻は、宗教学・宗教史学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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trazom
23
聖書の翻訳に関しては、鈴木先生の「聖書の日本語――翻訳の歴史」という名著に詳しい。丸谷才一さんが痛烈に批判した口語訳聖書の弛緩は多少改善されたとは言え、現代の新共同訳でも、文語訳聖書の持つ格調高いリズムと歯切れの良さには遠く及ばない。本著は、「聖書の日本語」の続編として、文語訳聖書の代表的聖句がどんなふうに引用されてきたかを紹介することに重点がある。松下幸之助とか釈宗演など意外な人たちが幅広く登場し、改めて、文語訳聖書が社会に深く浸透していたことを実感する。思わず声に出して読みたくなる聖句のオンパレード。2019/08/31
kei-zu
19
クリスチャンだった祖母は、「やっぱり文語訳の方が良いわねぇ」と言っていました。本書は、文語訳聖書の成り立ちから改訳の過程、芥川や太宰など名著への引用を紹介する。初めて知る過程は興味深く、紹介される名著の引用は楽しい。「エホバくだりて、かの人々の建つる街と塔を見たまへり」本書に引用はないですが、「パトレイバー」も文語訳でしたね。2024/08/07
葵衣
4
聖書を新たな視点からみることができてとても興味深かった。信仰の有無に関わらず、文語訳聖書は私達の言葉のうちにもこうして影響を与えてきたのだ。これからの聖書の読み方が少し変わってきそうで楽しみ。2025/03/21
saba
2
聖書翻訳史みたいなのは違う著作を読んだほうがいいのかも。後半は紹介というかこの句がこの作品で使われている…が続いて個人的には失速してしまった、調査量は膨大だということはわかるのだが。気に入ったのは「雲の柱もて導けり」積乱雲だよね~出エジプト記だから砂漠のイメージだったけど、砂漠に積乱雲が出来るあたりが「御わざ」なのかな?2021/11/01
tkm66
0
明解、かつ好著!2019/07/08