出版社内容情報
憲法九条と日米安保条約に根差した戦後外交。それがもたらした国家像の決定的な分裂をどう乗り越えるか。戦後史を読みなおし、その実像と展望を示す。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
わび
2
再読。著者の見立てによると、戦後日本は過去の呪縛から国際秩序を動かす「大国」として振る舞えず、また無意識ながらもそのような行動を自制してきたとされる。ともすれば外交下手とも評価されてきたそうした姿勢を著者は「ミドルパワー外交」として高く評価し、それを進めるために未来志向の改憲や東アジア政策を提言する。戦後外交の足跡を辿りながら、実は日本外交の取り得る振り幅は決して広くないことを示されると確かに著者の議論に納得はするものの、昨今の対外関係に当てはめてみると現状以上の政策が可能なのかという感じも受ける。2020/04/21
きっしょう
2
戦後日本の外交を振り返り、現在に至る問題点や今後の外交がどうあるべきかを提示している。日本は米中露のように国際社会に大きな影響を与える大国を目指すのではなく、オーストラリアやカナダのような中規模の国としての外交を展開する方向性は理解できるし賛同もする。ただ、対アジアではやはり歴史認識の問題をネックとしている。そこにのみ焦点を絞って自国の主張だけが正しいと言い張る国や、約束を守る気が無い国に対しては結局のところ何の解決にもならないのでしょうね。2017/11/10
Yoichiro Kaneko
1
非常に共感できる外交論だった。日本のあるべき国防のビジョンと外交戦略が、過去の歴史、現在の状況を踏まえ、述べられており、それは大国外交ではなく日米安保をベースにした中級国家外交というもの。今の日本の現状と将来を考えると妥当な方向性だと思った。理性的に考え、最大多数の幸福を実現しようとすると、中級国家の日本として戦略を立てるのがよいと思う。2017/10/10
Studies
0
良書。2017/11/22
省事
0
戦後日本外交史を九条と安保という二つ枠組みの中で活動したものとして描く通史。 戦後日本は確かにそこそこの大国ではあるが、国際秩序をひっくり返す大国間ゲームをやるような「超大国」ではないのだから、米国との同盟を基軸にしつつ、同等のポジションにある豪韓ASEANと提携していく方がよいし、またそうした政策路線を自覚的に選択できるような改憲を構想するべきだろう、という政策提言につながっていく。 著者が強く非難するのはそうしたものをなんとなく忌避しながら、結局無自覚に九条・安保の枠内に収まる左右の政治勢力である。2017/10/20