出版社内容情報
皇帝、彫青、男色、刑罰、宗教結社など中国裏面史を彩った人物や事件を中国文学の碩学が独自の視点で解き明かす。「怪力乱心」をあえて語る!
内容説明
中国小説、なかでも怪異譚や笑話など庶民文学研究の第一人者が、多くの資料に目配りを利かせ、洒脱な筆さばきで歴史の表面に浮かび上がってこなかった知られざる裏面を独自の視点から鮮やかに掘り起こす。採りあげられる話題は、皇帝、彫青、にせ倭寇、流言、筆禍事件等と多彩で、特に仏教の僧侶、道教の張真人、宗教結社の問題は、現代中国にも密接に連なるテーマ性を兼ね備えている。
目次
南宋真贋列伝―三人の天一坊と二人のアナスタシア皇女
徽宗・欽宗の遺詠
南渡世相雑記
殺生禁断
宋代風俗禁令のいろいろ
太監劉瑾
にせ倭寇
翠翹―漢人の「倭寇」とその「夫人」の物語
暗愚外紀
魏忠賢生祠遺聞〔ほか〕
著者等紹介
澤田瑞穂[サワダミズホ]
1912‐2002年、高知県生まれ。國學院大學高等師範部卒業。跡見学園女子大学助教授、天理大学教授、早稲田大学文学部教授を歴任。中国文学専攻。文学博士。二度の中国滞在中に収集された民間信仰、風俗に関する貴重な資料が「風陵文庫」として早稲田大学図書館に収蔵されている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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HANA
60
宦官、絵画怪談、刺青、惨刑、男女、男色…中国史の表には出てこない様々な話題を語って尽きることのない一冊。やはりこういう社会の裏面の闇に開く極彩色の花は興味深いなあ。澁澤龍彦や松田修を思い起こさせる。冒頭の天一坊的事件や宦官の専横からして面白く門外漢としては初めて教えられるものばかり。王朝末の絵画怪談の事など初めて知った。でお目当ての刺青や残酷刑も期待通り。史書から引かれた変遷や共通する部分に目を奪われる。中国史とは膨大な記録であり、記録の海の海図は本当にありがたい。自分の興味のある部分については特に。2018/08/29
さとうしん
7
中国の風俗習慣や民間信仰の研究で知られる著者による、近世中国の史談。偽皇族・刺青・駙馬と公主の悲惨な結婚生活・男色・宗教結社など話題は多岐にわたるが、中国人倭寇を「にせ倭寇」と断じているあたりは時代的な限界を感じる。研究の細分化によってこの手の史談も粗が目立つようになってきているのかもしれない。2017/09/21
六点
6
支那文学の大家による、支那史や支那文学の中に収められた余話を大成した学術的エッセイ集。「残酷」の発想が日支まったく異なっていたりするところに「ああ、ここらへんからネタをとっているんだな」とにやりとしてしまった。結構際どいネタも多いのであるが、全然下品にならぬところは深い学殖によるものであろうなあと思う。2018/04/01
見もの・読みもの日記
2
刺青・男色・残酷刑など「表向き」の中国史があまり扱わないテーマが真面目に詳しく取り上げられていて面白かった。古代から近代まで時代を自由に渡り歩くが、頻出するのは明代。しょうもない皇帝ばかりだが、群を抜いて問題児の正徳帝に関し、著者がどこか好意的なのが微笑ましい。2017/11/16
湯豆腐
2
内容の古さや考証のまずさ、あるいは先人賛美のあとがきを読むと、歴史学にせよ文学にせよ様々な仮説や方法論を試行錯誤して研究を深化させてきた数十年の間、中文の学界は戦前の老文人の時代からまるで微動だにしていないような印象をこの本からは受ける。2017/10/29