出版社内容情報
百姓=農民という既成概念を根底から覆し、海民が活躍した、まったく新たな日本社会像を鮮烈に甦らせた、網野歴史学の記念碑的名著。解説 佐々木高明
内容説明
日本を農業中心社会とみなす、長年常識とされてきた社会像は、近年つくられた虚像だった―ベストセラー『日本の歴史をよみなおす(全)』で、このことを明らかにした網野史学。この一貫した視点から、本書では「百姓」=「農民」という定説を覆し、実際にはその大きな部分を占めていた「海民」たちの活躍を読み解く。漁業、製塩業に従事するのみならず、広く遠洋交易を営み、企業家的な活動すら行った海民たちは、いかに日本の社会を彩り、形作ってきたのか。史料を駆使してその豊かな世界を掘りおこし、日本史に新たな地平を切り開いた快著。
目次
序章 海からみた日本社会
第1章 北国の社会と日本海
第2章 瀬戸内海交通の担い手
第3章 太平洋の海上交通と紀伊半島
第4章 西海の海民社会
第5章 中世前期の水上交通―常陸・北下総を中心に
終章 残された課題
著者等紹介
網野善彦[アミノヨシヒコ]
1928‐2004年。山梨県生まれ。東京大学文学部国史学科卒業。名古屋大学助教授、神奈川大学短期大学部教授、同大学特任教授を歴任。歴史家。専攻は日本中世史、日本海民史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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壱萬弐仟縁
33
江戸初期以来、「百姓」時国家は農業経営だけでなく、廻船交易、商業を本格的に展開するとともに、製塩・山林経営から鉱山にもかかわりをもち、「蔵本(くらもと)」ともいうべき役割を果たす一種の企業家の風貌をそなえていたといっても決して過言ではなかろう(017頁)。企業家ともいうべき時国家にもみられるようにもみられるように、日本海交易の最先端として、松前にいたる広域的な活動に従事する豊かな廻船人・商人が集住した都市、あるいは都市的な集落にささえられた先進的で富裕な地域だったのであり、こうした奥能登の特質は、2017/12/18
turnstiles
1
☆☆☆☆2018/02/04
みにまい
1
「日本の歴史を読み直す」を先に読んでいたので、『時国家』の予備知識があり読みやすくはあった。地元の話で恐縮だが、二世代まで「海上交通」は割と身近な存在だったらしい。河口付近の八幡神社には船着場があり、そこから川を上って(現在)国指定文化財の観光地あたりまで行けたとか。今なら橋渡っての場所が、船で行くほうが便利で早かったとか聞いたことがある。地図にも、海岸線ではないのに『津』『泊』『船』のつく地名があり、昔はこんなところまで船で遡って行けたんだなあ、と妙に感慨ふけた記憶がある。2017/12/13