出版社内容情報
戦時中から戦後にかけて経済への国家統制とはどのようなものであったのか。その歴史と内包する論理を実体験とともに明らかにした名著。解説_岡崎哲二
内容説明
統制とは、市場の価格機構に何らかの方法で干渉し、その機能を制限することである。日本における経済統制は、世界恐慌による危機的状況への企業の自主対応から生まれた。やがて、日中戦争(日華事変)の勃発、太平洋戦争への突入と戦争が全面化するにつれ、性格を変貌させていく。国家による軍需生産への集中とそれ以外の生産物への介入拡大という、統制が統制を呼ぶ事態のなか、破局へと突き進む日本―。昭和12年(1937)から昭和25年(1950)までの国家統制時代を中心に、名著『昭和史』の著者が経済の動きについて全体像を提示する。戦後の出発を決定づけた戦時中の経験とは何であり、現代に何を教えるのか。
目次
プロローグ 「統制」の経験
1 恐慌と統制
2 日華事変と全面統制の開始
3 太平洋戦争前夜の日本経済
4 太平洋戦争下の統制
5 戦後の経済統制
エピローグ 石油二法の問題点
著者等紹介
中村隆英[ナカムラタカフサ]
1925‐2013年。東京に生まれる。1952年、東京大学経済学部卒業。東京大学教授、お茶の水女子大学教授、東洋英和女学院大学教授を歴任。東京大学名誉教授。著書に、『昭和史』(東洋経済新報社、大佛次郎賞、英訳版は日本学士院賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
- 評価
-
hide-books本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
中年サラリーマン
10
元々戦前の前提として「今後の戦争は総力戦になる」という前提から経済統制の考え方が出てくるわけだが、日本に関していえば統制できていない。補給線を軽視したとかいろいろあると思うが、僕が一番思うのは島国で人口の多い日本でしかも物資を外に頼らざるを得ない日本で統制してしかも世界一効率のよい統制を実施してもしょせん外国から蛇口を停められたら終わりということ。本書を読んでいやというほど分かった。日本は周辺地域と協力していくか、周りから奪い取るしかないのだ。こう見ると聖徳太子の「和をもって・・」というのはやはり慧眼。2017/09/04
Mealla0v0
5
「統制とは市場の価格機構に何らかの方法で干渉し、その機能を制限することである」が、その実施主体が企業である場合には「自主統制」(カルテル・トラストの形成)、国家である場合には「国家統制」と呼ぶ。後者は、最初の総力戦であったWW1や社会主義国家の計画経済においてみられる。日本の場合、まず統制は満州国で実験的に導入され、日中戦争以降に本土でも導入され、戦後間もなくの頃も継続された。本書の叙述は、統制経済が一貫した合理性によって構築されていったとするのではなく、様々な集団との折衝や妥協の結果だとしており興味深い2021/12/19
toshiyk
1
昭和恐慌から敗戦後ドッジ・ラインまでの日本における統制経済の研究本。 淡々とした筆致とはいえ、時系列的に戦中の統制経済の進展を追うのは、無理筋の戦争遂行過程を辿ることを意味するので、気が滅入ります。そんな中、木綿問屋の息子だった著者が当時の記憶を振り返る箇所がいくつかありまして、やはり暗い話ばかりとはいえ、当時の市井の生活を覗き見るようで、門外漢にはよいアクセントになります。2017/06/17
-
- 和書
- 蟻んこの独り言