出版社内容情報
「食」における禅の心とはなにか。道元が禅寺の食事係である典座の心構えを説いた一書を現代人の日常の視点で読み解き、禅の核心に迫る。解説 竹村牧男
内容説明
曹洞宗の開祖・道元は、留学先の宋で二人の老典座(禅寺の食事を調える役僧)に出遭い、日常のすべてが仏道修行であり、そこに本務と雑務の区別がないことを悟る。そして帰朝後、日本最初の禅道場を開創するに際し、他の清規(修行僧のための規範)に先駆けて、仏道から「食」を論じた『典座教訓』を著す。本書は、その原典・書き下ろし・現代語訳・解説から成る。著者は道元思想に寄り添いつつ、食事を作ることを通して、いのちの深みや禅心を説く。「食」に携わる人びと、ひいては「食」を享けるすべての人に、今、読まれるべき一冊である。
目次
1 道元禅師と『典座教訓』(禅僧道元はなぜ料理の本を書いたか―「まえがき」に代えて;著者道元禅師のこと;『典座教訓』という本について)
2 『典座教訓』を読む(六知事の一つ、典座;料理の専門家、典座;仏祖の遺訓;食材は自分のひとみだ;献立の決定 ほか)
3 原文・典座教訓
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
7a
5
料理者の心得に留まらず常に禅の教えを説いている。漢文はとても読めないので、現代語役に加えて解説まであるので大変ありがたい。だがどこまでが道元禅師の言葉でどこからが著者の意見なのかわかりづらいところも。曹洞宗では参禅と日常生活を分けない。日常生活も修行であり、僧や仏に食事を供する典座は重要な役割である。「物我一如」と「他其非我」の心、六味三徳を忘れないようにする。2018/03/30
ジュリ
2
原文、現代語訳、解説からなっている。解説ではなぜ道元禅師がこのようなことを書いたのか説明されていて、典座教訓について深く理解することができた。2019/02/03
Go Extreme
1
道元禅師と『典座教訓』: 『典座教訓』という本について 『典座教訓』を読む: 六知事の一つ、典座 料理の専門家、典座 仏祖の遺訓 食材は自分のひとみだ 献立の決定 自ら心を尽くす 六味・三徳 砂・米一時に去る 自ら手ずから 整理整頓 副食物の材料 物我一如 料理すなわち仏の行 物を逐うな 参禅を怠ること勿れ 無相の自己 僧食九拝の礼 威儀即仏法の宗旨 他人は私ではない 文字・弁道の大事 文字上の一味禅 料理人の心がまえ ただ一つの大海の味 聖なる沈黙 利他すなわち自利 喜心・老心・大心 大事因果2024/09/19
天使の奇跡
1
「禅の食」という本を読んで、典座教訓を読もうと思った。作業に手を抜いたり、使う材料を疎かにしてはいけない。使う材料がいいものかわるいものかで差をつけてはいけない。料理の場所、相手でも同じ心で作るのである。典座の心構えというより生きていく上の教訓である、仕事の種類で気持ちを変えてはいけないということである!2021/08/08
壹玖
1
食事を作るということに関してのみではなく、そもそも食事とは他の命を頂戴して己の命を生かす行いであり食事そのものが生きるということそのものに直結するという意味では、生きることへの心構えを説いた書物と云える「典座教訓」の解説書のようなものだった。古文が苦手なので原文自体は深く理解できていないが、対訳と解説が丁寧で沁みる。それでもまだまだ理解が至らないところも多々あるので、恐らくこれから思い立つたび何度も開く本になることだろう。2017/03/22