内容説明
古代ギリシャ人が思い描いた「原子」の世界観は、量子力学の確立によって現代に甦ったかに見える。けれども量子の奇妙な振る舞いは、「自然とは何か」という問に答えるどころか謎を深めるばかりであった。波動力学の提唱者として物理学の最前線に立っていたシュレーディンガーは科学の役割を、そして人間存在の意味をどのように考えていたのだろうか?高名な『生命とは何か』に続く晩年の講演録。新訳。
目次
自然とギリシャ人(古代の思想に立ち返る動機;理性と感覚の争い;ピタゴラス学派;イオニアの啓蒙運動;クセノパネスの信条、エペソスのヘラクレイトス;原子論者;科学の特別な特徴とは何か?)
科学と人間性(生き方における科学の精神的意味合い;真の重要性を打ち消しかねない科学の実際的成果;物質に対する人々の考え方の根本的な変化;基本的概念は物質でなく形である;わたしたちの「モデル」の本質;連続的記述と因果性;連続性の複雑さ;付け焼き刃の波動力学;主体と対象との境界は崩れたとされる;原子か量子か―連続性の複雑さから逃れるための古くからの呪文;物理的不確定性は自由意志にチャンスを与えるか?;二ールズ・ボーアのいう、予測を妨げるもの)
著者等紹介
シュレーディンガー,エルヴィン[シュレーディンガー,エルヴィン] [Schr¨odinger,Erwin]
1887‐1961年。ウィーン生まれの理論物理学者。電子の波動の従うべき方程式を導き、「波動力学」を確立。その業績が認められ1933年にノーベル物理学賞を受賞した。その一方で科学と人間存在、科学と精神の問題などについての思索を深め、晩年には物理学の枠を超えた壮大な哲学を展開した
水谷淳[ミズタニジュン]
東京大学理学部卒業、同大学院修了。博士(理学)。翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。