内容説明
「ショパンのスケルツォ第4番。あれはまだ飛び方を習得していない天使を描いている」―日本との関係も深い20世紀最大のピアニスト、スヴャトスラフ・リヒテルが、駆け出しの演出家に語った驚きの言葉のかずかず。音楽作品が描き出す物語、他の芸術分野への連想、著名な人たちの思い出などがいきいきと語られる。プルーストやシェイクスピアを引用し、フェルメールやピカソを評し、フェリーニやクロサワを讃える。天才の想像力が全開する類いまれな一冊。文庫化に際し、「八月を想う貴人」を増補。
目次
そもそもの始まり
第1部 一九七九‐一九八三年(ウィーンの謝肉祭(シューマン)
抵抗の魂(シューベルト)
パックの踊り(ドビュッシー)
人間とピアノ(ベートーヴェン)
私は葬儀で演奏する(サン=サーンス) ほか)
第2部 一九九二年のリヒテル(デルフトの眺望(ドビュッシー)
楽曲をめぐる五十五の断想)
八月を想う貴人―キエフでの一日
著者等紹介
ボリソフ,ユーリー[ボリソフ,ユーリー] [Borisov,Yury A.]
1956‐2007。キエフ生まれのロシアの演出家・映画監督。名優オレク・ボリソフの息子。レニングラード音楽院に学び、モスクワ室内歌劇場等でオペラ・演劇の演出多数。オペラの台本も手がけた
宮澤淳一[ミヤザワジュンイチ]
1963年生まれ。青山学院大学総合文化政策学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Kan
2
20世紀最高のピアニストの1人、リヒテルのインタビュー。まずリヒテルの博識と知性に圧倒される。名言のオンパレード。神に近づく唯一の道は芸術だ、など。音楽や文学のみならず、映画にも造詣が深いのにも驚いた。シューベルトはプルーストに似ているとの指摘もなるほど、と思った。2018/10/31
Historian
1
バッハ「平均律クラヴィーア曲集」をめぐって、リヒテルは語ります。「1.建築、これが一番大切。構成力です。2.絵画、一つのスタイルで、あらゆるスタイルで。3.シェイクスピアのような芝居、劇場。・・・6.天文学、望遠鏡をもつべきです。7.夢。」 とくに第一巻8番(変ホ短調)は、天空から降りたったアトランティス。失われた大陸=楽土であると。 「文庫版訳者あとがき」には訳者の迷いのようなことが記されていますが、訳文の語調はちょっと問題です。クラシックで貴族的なリヒテルにふさわしい日本語とすべきでした。 2014/08/22
shin1ro
0
ショパンのスケルツォ第4番「まだ飛び方を習得していない天使を描いている。岩壁に衝突し、自分で翼を繕う」 シューマンの四つの夜曲第4曲「出口のない、耐え難い部屋の中を色鮮やかな幻影に、期待に満ちた夢に変える、幻燈」 無口で武骨なイメージのリヒテルでしたが、熱病に浮かされたやうな語り口は驚き。その言葉は文学的・観念的と云うにはあまりにヴィヴィッドで、時に壮大で時に繊細なイメージの奔流に翻弄されます。実際、9割方は理解不能w ただマエストロの頭の中では、常に何かがスパークしていることはよく分かりました。2014/05/05
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