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ちくま学芸文庫
オペラの終焉―リヒャルト・シュトラウスと『バラの騎士』の夢

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  • サイズ 文庫判/ページ数 382p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784480095787
  • NDC分類 766.1
  • Cコード C0173

出版社内容情報

芸術か娯楽か、前衛か古典か――。この亀裂を鮮やかに乗り越えて、オペラ黄金時代の最後を飾った作曲家が、のちの音楽世界にもたらしたものとは。

内容説明

芸術か娯楽か、前衛か古典か―。音楽がこの深い亀裂の前に立たされた20世紀初頭、それらを見事に調和させて時代の寵児となったのがR・シュトラウスだ。とくにその力のすべてが結晶化された『バラの騎士』は、オペラの幸福な黄金時代の最後の輝きといえる。不協和音を大量に用い、芸術的な実験性を追求しつつも、クライマックスでは映画音楽と見紛う甘い調性を美しく響かせ、音楽に夢を求めた大衆の願望に応えたこの鮮やかな作品は、その後の音楽に何をもたらしたのか。

目次

『バラの騎士』が生まれた時代
第1部(楽劇・ヴェリスモ・メルヘン―ポスト・ワーグナー時代のオペラ状況;陶酔と抽象―『サロメ』と『エレクトラ』の詩学;「モーツァルトへ帰れ!」―ロココ・ブームと喜劇オペラの復興)
第2部(二重ストーリーと様式交差―台本構造への一瞥;仮面と素顔―様式混合の問題;調和の幻想―様式統一の問題;夢の終わりに―『バラの騎士』の詩学)
私はこの世に忘れられ―シュトラウスと二十世紀オペラ

著者等紹介

岡田暁生[オカダアケオ]
1960年京都生まれ。京都大学人文科学研究所教授。専門は近代西洋音楽史。『音楽の聴き方』(中公新書 2009年、吉田秀和賞受賞)など、西洋音楽を独自の視点から、やさしく読み解いた著書の多くで広く知られる。他の著書に、『オペラの運命』(中公新書 2001年、サントリー学芸賞受賞)、『ピアニストになりたい!』(春秋社 2008年、芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

kenitirokikuti

6
図書館にて。文庫版のタイトル『オペラの終焉』、副題は「リヒャルト・シュトラウスと〈バラの騎士〉の夢」。元は1997年刊行の『〈バラの騎士〉の夢-リヒャルト・シュトラウスとオペラの変容』▲プロローグを読んだ。〈「芸術」と「娯楽」の分裂はいつ始まったのか?〉〈それでも作曲家たちは、曲の要所で効果的に調性を使うことをやめなかった。[…]曲のポイントでは、しっかりとロマンティックな三和音が鳴る。〉そこをも突き崩したのがシェーンベルクである。2020/11/23

れぽれろ

4
ポストワーグナー期のオペラ史と、R・シュトラウス「薔薇の騎士」の考察。18世紀末以降のブルジョワジーのためのオペラというジャンルは、ワーグナーにおいて芸術性と娯楽性の折衷が完成。しかし第1次大戦後の大衆社会化により、音楽は芸術(マニア向け)と娯楽(大衆向け)とに乖離。1911年の「薔薇の騎士」は、ワーグナー的陶酔(マルシャリンの場)と、ロココ-ウィーン風ナンバーオペラ(オックスの場)が奇跡的に結合した、オペラ史終焉前の最後の夢物語。本書第1部はオペラファンにお勧め、第2部は「薔薇の騎士」ファン必読です。2017/05/04

kumoi

2
どんな音楽を作るかにエネルギーが注がれていた19世紀に対して、音楽の解釈にテーマを見いだしたのが20世紀であった。このテーマを得意としたが、1920年代のストラヴィンスキーである。彼は単なる古典回帰ではなく、古典を通して独自の芸術を表現することに成功し、解釈としての音楽の新たな可能性を示した。一方で、19世紀最後の作曲家として名高いリヒャルト・シュトラウスの音楽は、古典の再現に止まり、意図的かどうかはともかく、時代の要請について行くことができなかった。どんなに偉大な作曲家も時代の中に生きているのだ。2022/02/27

sou

1
オペラ鑑賞の予習本。「ばらの騎士」が作曲された1910年頃を最後に、映画やラジオの台頭による文化の大衆化で音楽は「芸術」と「娯楽」に分離していく…。複数の様式を上手く共存させるなどのシュトラウスのテクニックにヘェ~と思う一方、これ以降の時代についていけなくなったシュトラウス像も興味深かったです。岡田暁生さんの本は5冊目ですがやはり面白い!「フィナーレでは、元帥夫人が青春に別れを告げるだけではない。ここではシュトラウス自身が、オペラ史の「思い出の名場面」へ、次々に別れの挨拶を送っていくのだ」(P284)2017/10/01

汲平

1
古典的名著である。芸術と娯楽が手を携えていた幸福な時代の掉尾に美しく輝く作品の一つ「バラの騎士」。ひたすらに美しく、しかし退廃の気配を湛えた作品である。カラヤンのCDやクライバーのDVDの名演に魅了されたものだ。この著作は、このオペラの歴史的位置づけを明らかにし、オペラ終焉のさまを解説してみせる。その手腕は鮮やかで、目から鱗が何枚も落ちた。2014/01/22

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