出版社内容情報
科学はどのようにして生まれたのか? いつ、なぜその自明性が壊れ、新たな理論に入れ替わるのか? 科学哲学の重鎮が、その変遷の謎に迫る。
内容説明
古代・中世のアリストテレス的自然観を克服し、信仰や迷信から独立することで17世紀に近代「科学」は誕生した。しかしパラダイム転換はくり返され、20世紀には科学技術に伴うリスクも叫ばれるようになる。科学哲学の第一人者がこうした決定的な転換点に光をあてながら、知の歴史のダイナミズムへと誘う。科学神話が揺らぐ今だからこそもう一度深く掘り下げる、入門書の決定版。
目次
第1部 科学史(「科学」という言葉;アリストテレス的自然観;科学革命(コスモスの崩壊;自然の数学化;機械論的自然観)
科学の制度化)
第2部 科学哲学(科学の方法;科学の危機;論理実証主義と統一科学;批判的合理主義と反証可能性;知識の全体論と決定実験;パラダイム論と通約不可能性)
第3部 科学社会学(科学社会学の展開;科学の変貌と科学技術革命;科学技術の倫理;3.11以後の科学技術と人間)
著者等紹介
野家啓一[ノエケイイチ]
1949年仙台生まれ。東北大学総長特命教授。日本哲学会元会長。専攻は哲学、科学基礎論。近代科学の成立と展開のプロセスを、科学の方法論の変遷や理論転換の構造などに焦点をあてて研究している。1994年第20回山崎賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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びす男
45
人間による知の探究史を追いかけて、ロマンを感じる大人になれた。そのことを幸福に思う■科学・産業・技術が結びついたのは、つい最近のことだ。そして、計り知れない力を持ち始めている■古代ギリシャ哲学や科学革命にはじまり、宇宙の出来事はすべて推測できるという「ラプラスのデーモン」、不確定性原理による限界への認識……。門外漢だが、ポイントが整理されていて興味深く読めた■科学倫理については14章から。「象牙の塔に閉じこもる」ことを許されなくなった科学は、新しい局面に来ている。その未来を左右するのは、自分たちなのだ。2021/04/27
1959のコールマン
22
☆4。内容が3部構成で、科学史、科学哲学、科学社会学と分かれている。科学哲学の本では無く、科学そのものを問う内容になっていて、むしろシンプルに「科学とは何か」という方がしっくりする。とはいえ、「ヨーロッパでは、科学はもともと『自然哲学』を母胎として生まれた知識であり、・・・それは宗教的迷妄に対峙する啓蒙主義的な世界観と密接に結びついていた」p27、「現在われわれが目にする社会システムとしての科学の誕生は、たかだか180年ほど前の出来事にすぎない」p31,等、示唆に富む言葉が出てくるので読み応えあり。2019/06/15
三井剛一
20
おもしろ過ぎて一気読みしてしまった。日本での科学の受け入れ方が、欧米と比べ、技術応用に力点が置かれているのも歴史を知ることで納得した。原発事故など科学技術に追いつけていない。過度な科学への信頼は、恐ろしいことを招いてしまう。未来のために一般市民と専門家が共に意思決定ができるよう科学を学ぶ必要がある。2025/01/19
Bartleby
15
「科学史」と「科学哲学」、「科学社会学」の三部から成り、第一部ではギリシャ的な自然観が近代の科学革命を経て否定されていく流れが、第二部では論理実証主義の試みとその問題点、カール・ポパーの反証主義やクーンのパラダイム論などが、第三部では科学を取り巻く社会的状況の変化や科学技術に関するリスクと倫理の問題が語られている。科学についての様々な問題が包括的に扱われていて、ひとつひとつの説明もポイントが押さえられているので入門としてとても良かった。2015/04/06
みき
12
影響をうけて流動する哲学という立場が面白かった。しかし学問は本質的には周囲の状況から成り立つものなので、この流動的な立場は当たり前でとくに語ることもないくらいのものなんだろうけれど、それにあらがうように絶対的真理や反証のない全体に言えるようなことを、その流動的立場から言おうとすることも面白い。2021/01/18