出版社内容情報
下巻は、大乗仏教から密教へ。第六住心の唯識、第七中観、第八天台、第九華厳を経て、第十の法身大日如来の真実をさとる真言密教の奥義までを収録。
内容説明
日本仏教史上もっとも雄大な思想を展開した空海の主著。新校訂の読み下し文と、適切な語釈、理解しやすい現代語訳によって構成。本能のままに生きる人間のありかたから、やがて道徳心が芽生え、素朴な宗教心につながり、仏教と邂逅、そして密教へと向上していく精神のありかたを、心の十の発展段階(十住心)として体系的に説く。そしてまた、儒教・道教・仏教・インド思想など、当時知られていた、世界のあらゆる思想や宗教を摂取して位置づけ、奥深い秘密曼荼羅法教(密教)の玄妙なる旨趣の真の意味を解明する。下巻は、唯識、中観、天台、華厳を経て、法身大日如来の真実の教え密教までを収録。
目次
巻第六 他縁大乗住心第六
巻第七 覚心不生住心第七
巻第八 一道無為住心第八
巻第九 極無自性住心第九
巻第十 秘密荘厳住心第十
著者等紹介
福田亮成[フクダリョウセイ]
1937年東京生まれ。東洋大学文学部仏教学科卒業。文学博士。現在、大正大学名誉教授。総本山智積院・智山専修学院院長。川崎大師教学研究所所長。種智院大学客員教授。真言宗智山派成就院長老(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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壱萬参仟縁
11
概要→原文→語釈→あらまし(要旨)のような構成。要旨の要点のみでを。十住の心:発心住、治地住、修行住、生貴住、具足方便住、正心住、不退住、童真住、法王子住、灌頂住。悉曇(しったん)文字なんていうのは、初めて知った(456頁~)。梵語の字母という。インドの音声学(広辞苑より)。用語解説もある。三、四、五・・・など、数字にこだわりがあるのはなぜなのか? 福田氏の解説によると、空海は私度僧(官の認可を受けていない民間僧)として仏教に傾倒(593頁)。分厚い。量も内容困難もあり、なかなか大変である。2014/02/02
記憶喪失した男
7
カント哲学と同じ文章の「物自体は認識できない」を書いてある箇所はあった。下巻67ページ。「厚厳経」にいう。「菩薩は瞑想の位において、心に映ずる影はただ心そのものであると観じて、対象の想はすでに滅して、ただ明らかに自分の識だけのすがたであると観ずる。このような内面の意識に住して、(意識の)対象は有るのではないと知る。そしてはたらきもまた無いと知り、後には認識されるものも離れているのである」と。だが、空海はカント哲学を述べたわけではなかった。2016/09/27
ハヤカワショボ夫
2
空海コレクションシリーズ読破!鍾愛する空海に触れるため作品に直当たりしましたが、言葉は古典でしかも内容は宗教ということで考えながら読むのにほとんど理解できず読むのに苦労しました。深遠なる空海哲学を本当に理解するためには、諸書の解説本を読むことに加え「写経」ならぬ「写本」する必要があるのではと思います。そしてオチのようにラストで大真言としての密教の不生については原文が欠落しているとは…。「そう簡単に判らせませんよ」という空海の声が聴こえる気がします。密教とは考えるのでなく感じることなのかな…。【家】★★★2015/05/14
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7巻・般若経、8巻・天台法華、9巻・華厳、10巻・真言、と経典成立年代順の配列。 8巻・天台法華編は分量が少なく、距離感の表れであるようにも見える。「密教なしの法華はNG」という経典が引用されている。素人の推測だが、「密教経典が一定程度、法華経の攻撃性を抑える効果を持ち得る」ということではないか。 「4巻・声聞編の呼吸修法(数息観)」 「7巻・中観編の字輪修法」 「9巻・華厳編の月輪/字輪修法」 「10巻・真言編の阿字の記述」 これらの箇所は、新義の覚鑁が導入した、真言の瞑想行「阿字観」の原典である模様。2024/04/12