出版社内容情報
ひとつの学問として、広がり、深まりゆく数学。数・微積分・無限など「概念」の誕生と発展を軸にその歩みを辿る。オリジナル書き下ろし。全3巻。
内容説明
「数」「微分積分」「無限」…新たな概念が生まれるとき、数学はひとつの学問としての深みと広がりを増してゆく。ひとりひとりの数学者の思索が歴史の中で積み重なることで展望が開けてきた、深い数学の森。21世紀にはどのような概念が生まれ、数学の新しい相貌が浮かび上がるだろうか。第1巻は古代人による「自然数」と「零」の発見から19世紀初頭に至るまでの、数学の広がりをたずねる。文庫書き下ろしオリジナルの、“概念”で辿る数学史。
目次
第1部 数学の基礎概念(数;数直線と実数;変数と関数)
第2部 概念の誕生と数学の流れ(数学の概念について;数のはたらき―歴史をふり返る;対数と小数;巾級数―代数と図形の中から;微分積分の誕生―ニュートンとライプニッツ;無限の登場;コーシーの『解析教程』)
著者等紹介
志賀浩二[シガコウジ]
1930年、新潟県生まれ。東京大学大学院数物系数学科修士課程修了。東京工業大学名誉教授。理学博士。一般向けの数学啓蒙書を多数執筆、第1回日本数学会出版賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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翔亀
39
【真理鉱山3数学篇2】数学思想史とでもいうべき本。<野生の思考>に対置される<栽培の思考>(レヴィ=ストロース)とは数学という知なのか。私はちょっと違うと思っている(産業技術という知なんだと思う)が、それを確認するのと、量子力学入門のためのお勉強が目的。全3巻。本巻は数の誕生から、実数体系の完成、関数の誕生、微積分の発見、コーシーの解析学(19世紀前半)まで。実数概念が確立したのは無限概念を取り入19世紀末まで待たなければならなかったこと。近世数学は、物理的現象の法則であるニュートン力学から時間という↓2021/02/20
Z
9
良書。著者は大学以上の数学と高校レベルの数学をつなぐのにもってこいの著作を何冊も書いているが、この本もその系列で、数学の基礎概念の実数、連続、関数、それをベースにした微積分の解説かつ概念の歴史。数学のε-δ論法が極限演算の証明に有用なのを初めて知った。数学の基礎概念の解説なので、大学入学したての学生なんかに、かなりオススメな本だと思う。2018/10/11
またの名
6
マイナスすなわち負の数をちゃんと計算の中で使えるようになったのは18世紀を過ぎてからで、170年程前までは(-1)×(-1)=1が演算規則として確立してなかった歴史に、ベッタリ付いた人間の痕跡を感じる。概念の探究を掲げる本書の興味深い点はエポックメイキングな古典著作を直接引用している紹介が多く、デカルトの『幾何学』やニュートンの『プリンキピア』といった先達がなまかたな表現を苦労して重ねつつ先進的概念を作り上げていく様子を、再現された場面のように概観できること。ライプニッツの哲学と数学が協働する感じも解る。2021/11/07
吟遊
5
平明な文体なのに、とてもエキサイティングな本。「概念を探る」というところにポイントがあり、数学史を追いながら、たとえば「小数」や「実数」という概念がいつ、どのように誕生し、また「対数」「微分積分」といった新しい概念が数学に与えた広がりを記述する。また、天文学や哲学といった背景にも目を留める。こうして、史的に概念を見直すことで「数学という学問」のあり方を描く。2015/08/14
やす
3
数学・とくに解析学の幕開けまでの歴史を解説。歴史とは言っても重要人物については触れられるが、概念がどのように発展してきたかを解説する。でもすごいのはやっぱりオイラーさん。π/2=3/2x5/6x7/6x11/10x13/14x17/18x19/18x23/22x... 分子は素数、分母は分子と一つ違いの奇数の2倍の数だそうな。2013/09/25