出版社内容情報
表題作の他「教育と精神衛生」などに加えて、豊かな視野と優れた洞察を物語る「サラリーマン労働」「病跡学と時代精神」などを収める。
内容説明
人生にとって始まりは重要であり、その後の行路に無視できない影響を及ぼす。精神科医として、患者の治療を通して時代を眺めてきた著者は「高度成長は終わったが、そのバランスシートはまだ書かれていない。しかし、その中に損失として自然破壊とともに、青春期あるいは児童期の破壊を記してほしいものである。われわれは大量の緑とともに大量の青春を失ったといえなくもない」と指摘している。思春期の難しさを丁寧に描き出した作品を中心に、豊かな視野と透徹した洞察を物語る「サラリーマン労働」「病跡学と時代精神」「サリヴァンの統合失調症論」などを収める。
目次
1(思春期における精神病および類似状態;思春期患者とその治療者 ほか)
2(サラリーマン労働;「熟年」ということばについてのひとりごと ほか)
3(病跡学と時代精神―江戸時代を例として;病跡学の可能性 ほか)
4(サリヴァン Harry Stack Sullivan(一八九二‐一九四九年)
サリヴァンの統合失調症論 ほか)
著者等紹介
中井久夫[ナカイヒサオ]
1934年、奈良県生まれ。京都大学医学部卒業。現在は神戸大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
chanvesa
29
「踊り場(中間休止の場)は生理的なリラックスの場、生活のリズムをつくる場として大事なものです。(25頁)」、「睡眠は、夜中に現れて昼間に乱したものを片づける『七人のこびと』である。だから、何よりも睡眠が問題である。眠らないと頭の中が『ちらかる』。(346頁)」各々、余白・あそびの重要さを強く認識させる。大石良雄(内蔵助)にとって、価値観を共有する京大阪の大町人の意識と、武士としての矜持のはざまに立つ「『境界人』としての自らの立脚点(226頁)」が意識される。2020/07/14
tom
16
中井先生の小論集。なんせ、4か月くらいかけて、電車の中で、ポツリポツリと読み進めたものだから、最初の方に何を書いていたのかも、忘れてしまった。年だから、仕方ないです。でも、適当に開いて、読み始めても、そのたびに新鮮な気分になってしまう。この人は、本当にすごいなあと思う。終わりの方にアメリカの精神医学者サリバンについての解説、ロールシャッハ図版を作ったロールシャッハさんについての解説がある。とりわけ、サリバンに関する解説は面白い。加えて、末尾の解説もなかなかよろしい。良書です。2015/08/15
fonfon
10
子どもは真の権威には反抗しない、反抗するのはSilly Authorityにだけだ、というサリヴァンの言葉が何度か引用される。戦前に受けた教育を「外傷体験」と断じ「親は無力であり、教師も必ずしも味方ではなかった。私は天文学の本をくりかえし読んで、宇宙から眺めたら戦争も我々の生死もとるに足らないことであるに違いない、という慰めで自分を支えた」と。治療も勉強も、と二兎を追うことの困難。踊り場的休息時間を回復のためにとることの必要。治療者は踊り場の階段を駆け上がらろうとする患者を巧みに降ろさなければならない。2012/02/21
mob
4
・図書館でなんとなく手に取る。人間観察の極北にある精神医療系だが、興味深い内容。 ・古さは否めず、不良が暴れてた時代感覚。努力する層へのアンチ学習価値で結集する群れの悪影響まで意識できず。「教育の元来の価値を信じなくなっている」と自然現象のように片付けるのは昭和の思考停止に近い。 ・思春期に限らず大人の患者への分析も多く、そこは古さを感じない。他の症状どころか健常な者のコダワリに応用できる面白さがある。 ・出来の良い小説で狂気へ向かうシーンは、治療的展開の真逆へ丁寧に進めていたなと、これを読んで思う。 2021/08/30
しいかあ
3
ネットで色々と記事を読みながら中井久夫の本読んでいると、改めてその考察の深さに驚かされる。タイトルこそ思春期であるけれども、内容的には高度経済成長期の人々の精神面を扱った記事が多いように思う(思春期の話題もその中に含まれる)。思春期、熟年といった、それぞれの記事で扱われている年代の人々が、執筆時から時間を経て、今現在社会の中でどういう役割を果たす年代となっているのかを考えると、現在を見る一つの視点となるかもしれない。2015/03/20




