出版社内容情報
柳思想の最終到達点「美の宗教」に関する論考を収めたシリーズ最終巻。阿弥陀の慈悲行を実践しようとした宗教者・柳の姿が浮び上がる。
内容説明
たくさんの美しいものに触れ、もの作りの現場に足しげく通った柳は、美を生む上で人間の「自我」が大きな障壁になっていることを確信する。ではどうしたらそれを克服することができるのか…。自我からの解放を説く仏教に若き日から親しみ、苦悩しながらもの作りにたずさわる仲間を持つ柳は、その難しさを痛感していた。思案のさ中、彼の眼に『大無量寿経』の中の一節「無有好醜の願」が飛込む。もはや美醜などない、全てのものは既に救われている、とするその一文を手掛りに、柳はどんな作り手でも「無」の境地に至り、美しいものを生み出すことのできる道を編み出していく。
目次
妹の死
死とその悲みに就て
亡き宗法に
私の念願
美の宗教
美の法門
無有好醜の願
美の浄土
法と美
不二美
仏教美学について
民藝美の妙義
安心について
凡人と救い
無謬の道
伝統の形成
心偈(抄)
著者等紹介
柳宗悦[ヤナギムネヨシ]
1889‐1961年。学習院高等科在学中に雑誌「白樺」創刊に参加。主に美術の分野を担当した。東京帝国大学哲学科を卒業後は宗教哲学者として活躍。その後、濱田庄司、河井寛次郎、バーナード・リーチ、富本憲吉らと出会い、「民藝」という新しい美の概念を打ちたてた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ロビン
17
3巻目は「美の法門」「美の浄土」「民藝美の妙義」など、陶器と人の「凡夫成仏」を可能にする「無事」の自在美を安定して生み出すため知識や自意識からの脱却と織の伝統のような「法」や自然の制約ー「他力」のちからの重視という思想が色を染めるように重ねて説かれる。わたしは初め柳は美の道から信仰に入ったと思っていたが、柳の辿った信仰の道に美の問題が含まれ、それは彼にとって不二の切り離せないものであったというのが本当らしい。ただ、柳の念仏理解は独特な部分があるということは感じていたところであり、解説にもその点言及がある。2019/10/06
壱萬弐仟縁
12
信美一如の仏教美学(009頁)。E.F.シューマッハーの仏教経済学とミックスすると、極めて魅力的な仏教を基礎とした美的経済学が誕生しそうな感じがする。「苦みに於て苦みを殺さず、それを活かす術はないであろうか」(050頁)。生きることは苦しいが、苦しみの後に生み出す何かに価値がある。真に正しい仕事は、誤解や冷遇や反抗を受けるとも、いつか波紋を広げるに至る(079頁)。自我から自由になることの難しさ(350頁)。囚われない心(366頁)、安全道(法の道、373頁)、そして、他力道(378頁)。自由あっての美。2013/10/11
烏
0
P403「雪 イトド深シ 花 イヨヨ近シ」2023/05/10