ちくま学芸文庫
横井小楠

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  • サイズ 文庫判/ページ数 487,/高さ 15cm
  • 商品コード 9784480093189
  • NDC分類 289.1
  • Cコード C0123

内容説明

幕末最大の思想家横井小楠。ペリー来航という欧米近代の外圧に対して、たんなる開国や攘夷ではなく、仁政という儒学的理想によって内外の政治的状況を具体的に批判し、政策を立案し実行しようとした。「堯舜孔子の道を明らかにして、西洋器械の術を尽くさば、なんぞ富国に止まらん、なんぞ強兵に止まらん、大義を四海に布かんのみ」。その目的のための実学思想は武家政権を根底から否定し、坂本龍馬や高杉晋作をはじめ、多くの人びとにはかりしれない影響を与え、明治日本の礎となる。幕末維新期の複雑な思想状況や込み入った人間関係のなかで、小楠の思想と生涯を見事に描き切った名著の決定版。

目次

1 時習館改革
2 実学党の誕生
3 学校問答
4 有道の国・無道の国
5 富国策
6 国際会議論
7 大義を世界に
増補1 実学と儒教国家
増補2 アジア型近代の模索

著者等紹介

松浦玲[マツウラレイ]
昭和6年(1931)広島県生まれ。京都大学放学処分。立命館大学大学院修了。京都市史編纂所主幹、桃山学院大学教授などを経て、現在著述業。専門は日本近代の政治史、政治思想史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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isao_key

11
2000年に朝日選書から刊行された『横井小楠<増補版>儒学的正義とは何か』を底本に補論とあとがきを加えている。他出版社の本を発行からまだ10年しか経っていないのに再出版するとは、担当者の思い入れが強いのだろう。内容は細部までかなりこだわって書いており、研究書としてはいいが、一般向け図書としてはそこまで必要ない。補論、あとがきで山崎正董氏、堤克彦氏の先行研究書に対しての批判を挙げているが、本書に載せなくてもいい内容。また参考文献が挙がっていないのは不親切。新書の徳永洋『横井小楠』の方がよくまとまっている。2016/05/05

bapaksejahtera

10
以前吉川の叢書で小楠の評伝を読んだ。本書はこれに批判的である。父が小楠門弟の徳富蘇峰も、その言論活動の中で小楠の思想を都合よく捻じ曲げたようだ。本書は纏まった著述のない小楠の思想を、その実践活動や書簡、関連人士の動向から詳しく紐解いている。特に補論や後書で描かれる内容は、彼の思想や社会的影響を判り易く説く。君子は修身斉家から始め、徳を以て人民を治めるに至る。儒教思想の基本は文治であり。武力を以て権力を握る覇道の思想とは矛盾する。良鉄は釘とならぬ。小楠の思想は、士をサムライと誤読する国では先走っていたのか。2024/04/22

壱萬参仟縁

6
時習館の学風として、成績が悪ければ藩士としては不都合だが、学問内容までは藩政の質には直結していなかった(024頁)。あまりに成績至上主義だと、評者のように萎縮してしまうタイプなのでちょっと苦手な塾か。聖人といえども無限の努力を、という考え方をしていたようだ(102頁)。厳しい人である。凡人にはなんといわれるか知れない。学政一致の政治が西洋で実行されていること(150頁)。小楠の思想は、居敬の比重が低く、欠落部分を新民の強調(現実政治への強い関心)と、天下に提示し続ける熱情に裏付けられる(278頁)。2013/04/05

Shinya Fukuda

2
朱子学とは江戸時代の幕藩体制を維持するための理論的基礎になった学問だと思っていたことが誤りだと分かった。寧ろ朱子学に忠実に政治を行えば世襲制の武士や藩主はなくなってしまい、天皇制も無くなってしまう。大統領制とか議会主義に行きついてしまうというところが新たな発見だった。江戸時代の朱子学は態勢擁護に都合の良いところだけを摘み食いしていたわけでこれは朱子学への冒瀆かもしれない。ただ、構成が複雑で、引用が多くそれも候文で、更に時間等にこだわる余りとても読み難い。何度か投げ出してしまおうかと思った。2019/11/13

bittersweet symphony

2
熊本藩内と一部江戸での前半生は動きの少ない記述に終始していますが、松平春嶽に呼ばれて越前に入って以降は、その春嶽の動静も絡まりあってひじょうに動きがダイナミックで興味深い内容。権威から独立して倫理に裏打ちされた政治学としての儒教を基盤にした横井の思想によって、単純な尊攘・開国・公武合体論に線引きできない各人物の微妙な立ち位置も描写されていて非常に面白いところですが、それぞれの時系列と共時的な位置関係を全体的に把握するのは残念ながら一般人には不可能ですね。2014/05/19

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