内容説明
われわれの祖先の素朴な宗教的感覚は、仏教が輸入されてもなお生き続け、ついには仏教そのものを日本的なものへと変容させる根強さを持っていた。近代に入り、科学との出合いや共同体の崩壊を経ても、その感覚は人々の心から完全に消え去ることはなく、今日にいたっている。とりわけ「死」といった日常を超える問題に対する時には、この素朴な感覚が、当然のように顔を出す。本書では、民俗学・歴史学の手法により、日本人の伝統的な宗教意識の諸相を明らかにする。そしてそこを起点に、日本人を救う普遍的な宗教のあり方を探る。民俗学者と宗教家、二人の碩学の出逢いによって生まれた伝説の名著。
目次
序章 伝統の心情
忌みの思想
仏神の加護
神の啓示
産土神の伝統
家と祖先
死生観
終章 国家・科学・宗教
著者等紹介
高取正男[タカトリマサオ]
1926‐1981年。京都大学文学部史学科卒。元京都女子大教授。専門は民俗学・日本文化史。幅広いフィールドワークと文献の精読により、日本人の意識の古層を取り出す研究に従事した
橋本峰雄[ハシモトミネオ]
1924‐1984年。京都大学文学部哲学科卒。元神戸大学教授。哲学家であり、浄土宗の僧侶でもあった氏は、絶えず日本における普遍的な宗教のあり方を模索し続けた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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紫羊
25
この本に書かれている宗教的民俗は、私の世代にとって何とも懐かしい感覚を呼び起こしてくれる。今では多くが失われてしまったように思えるが、日本人の祖霊崇拝は形を変えて受け継がれていくような気がする。2018/07/09
獺祭魚の食客@鯨鯢
17
列島の自然環境に根ざした民俗的な死生観に基づく穢れや禊、忌みなどのヤマト的な潔癖観はすべて「血」が影響しています。その後、仏教、道教、陰陽道など外来思想が移入された後も「貴族」と呼ばれる一部の人間は、殺しを生業とする武士を作り出し「穢れた」行為を忌避してきました。 前近代的と思われるかもしれませんが、私たちの心の奥底に仕舞われているこの感覚は、ある日突然思い起こされ、これからも次代に継承されていくのではないかと思います。2018/05/06
水菜
7
民俗学と歴史学の視点から日本の宗教意識を探る。「神の啓示」「産土神の伝統」「死生観」が面白かった。キリスト教と仏教の啓示の違いや死後の世界の観念など、普段なんとなく流しているようなことを考えることができる。「地獄の思想」では「慈悲深い」というように書かれていた仏教での臨終場面がこの本では違うとらえかたがされていて、同じ現象でも多数の見方が出きるのだと思った。終章は全体から見ると雰囲気が違い、理解しにくかった。2014/03/03
mittsko
7
知る人ぞ知る名著! 1968年刊、何十と刷りを重ね 2010年に文庫化したというんだから…その力は推して知るべし 歴史学、民俗学、哲学、一部比較宗教の知見に依りつつ 日本宗教史を文明論(近代論、近代化論)の文脈で、すなわち「現代」(60年代後半)という地点への流れ込みとして読み解く 類書は数あれど、帰納と演繹の循環作業、著者らの人間・社会・歴史についての見識などの点において、ここまでの達成はなかなか見当たらない! 文体の古さ、問題設定の抽象度の高さなど、読みにくい面はあろうが、チャレンジして損なし です♪2011/10/20
Junko Yamamoto
4
日本の基層となる祖霊信仰が各時代で変容していることがよくわかった。穢れの意識がどう生まれたか詳しく知りたかったが、そこは掴めなかった。天皇制と関わりがあるようだ。2020/04/25