内容説明
かつて竹内好は講演で、本書について「イスラム研究の最高水準をいっている」と語った。それは本書が戦前に執筆されながら、長年にわたり日本のイスラム教研究における基本文献として取り上げられていることからも証明される。大川の研究は広範にわたるが、本書ではアラビア半島の歴史を繙き、マホメットの生涯、コーランの概要、信仰の実態、儀礼の方法、教団の発展史、イスラム教法学を紹介する。その詳細な論述には、アジア主義啓蒙の気概が示されている。現代のイスラム教研究の第一人者による、大川が研究を始めた発端とその経緯を記した詳細な解説を付す。
目次
第1章 序説
第2章 アラビア及びアラビア人
第3章 マホメット
第4章 古蘭及び聖伝
第5章 回教の信仰
第6章 回教の儀礼
第7章 回教教団の発達
第8章 回教法学の発達
著者等紹介
大川周明[オオカワシュウメイ]
1886年山形県生まれ。1957年没。戦前の代表的な思想家。五・一五事件に関与したとして禁固5年の判決をうけ、戦後A級戦犯として起訴されるが病を理由に不起訴となる。インド独立運動に協力するなど、アジア主義的言論を繰り広げる。特にコーランの全文翻訳を成し遂げ、日本のイスラム研究に大いに貢献した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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大森黃馨
8
かのアジア主義思想家たる大川周明によるイスラム教の入門書だがところどころ入門書というよりも氏の思想家たる舞文が強く出ているような箇所もある 個人的な感想だがイスラム教は他の各教よりも神話的ではなく歴史的社会的生々しさがあるように謂うそれ故なのかイスラム教はアラブ的文化と強く結びすぎていてその布教範囲に反してあまり普遍性がない、ように思えてしまう 2023/11/08
Haruka Fukuhara
4
面白い。こんな本が戦時中に出されていたとは。こういう優れた人が戦犯にされたり追放されたりして日本の学界は妙なことになってしまったのだろうかと思った。2017/02/18
Shinya Fukuda
2
昭和17年に書かれたものながら長い間イスラム教の全体を知るための好著として取り扱われてきた。アラビアの歴史、地理から始まって、ムハンマドの生涯、クルアーン、法学そして信仰のことが簡潔にバランスよく書かれている。図解入りで礼拝の方法や顔の洗い方も書いてある。竹内好はこんなものが書けるのは相当な学者だと言ったらしいがある意味当たり前かもしれない。何故なら大川周明はインド哲学が専門だが宗教全般に造詣が深く漢籍から欧米の主要な文献に精通していた一流の教養人だったからだ。2021/06/26
Ataru Matsuyama
1
改めて読むと、すっきりと戦前のイスラム教について纏まっていて驚く。2020/05/27
やまうち
1
☆112020/03/26