内容説明
「牡丹燈篭」「乳房榎」などの怪談で知られる幕末明治の噺新・三遊亭円朝はまた、幽霊画のコレクターでもあった。怪談噺の糧にということか、円山応挙、歌川広重、河鍋暁斎はじめ、有名・無名の画家の鬼気迫る幽霊画を、円朝は収集し続けたという。嫣然たる美女、子を抱く母、無念、恨み、心残り…本書には谷中の名刹・全生庵に遺された、それら幽霊画50幅をカラーで掲載。辻惟雄、河野元昭、諏訪春雄、高田衛、延広真治、安村敏信の各氏による、幽霊と幽霊画にまつわる美術史、文化史の方面からの充実した論考を付す。スッと汗の引く名画集。
目次
幽霊画と妖怪画―円朝の幽霊画コレクションをめぐって
カラー図版 全生庵蔵・三遊亭円朝コレクション
応挙の幽霊―円山四条派を含めて
日本人の幽霊観と全生庵幽霊画
幽霊の“像”の変遷
怪談牡丹燈篭
全生庵の幽霊画コレクション
図版解説
著者等紹介
辻惟雄[ツジノブオ]
1932年生まれ。東京大学名誉教授、多摩美術大学名誉教授、MIHO MUSEUM館長。専攻・日本美術史(中世近世絵画史)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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井月 奎(いづき けい)
29
私は臆病なのに幽霊が好きなのです。で、全生庵が虫干しを兼ねて展示してくれる円朝コレクションのガイドブックというか解説本というか、の本です。まず表紙が良いです。全生庵には真贋の話はありますが、そんなことを抜きにしても優品である応挙筆「幽霊図」もありますし、鰭崎英朋が若き日に描いた傑作「蚊帳の前の幽霊」もあるのに、なぜか歌川国歳という人の「こはだ小平治」なのです。これがまたとぼけていていいのです。こはだ小平治、こわい話なのに、です。あ、内容は皆さま、ぜひお読みになってくださいな。ちょいと避暑になりますよ。2018/08/12
藤月はな(灯れ松明の火)
25
明治の怪談界を代表する一人である落語家、三遊亭円朝のコレクションの半分の紹介と幽霊画のコンテキストと変化を同時に考察した文章も読める美術、民俗学が擽られる本。幽霊が足がない理由や鬼と化す幽霊、柳や雨、鬼火、花と幽霊の相性がいいのはなぜかということなどを図像学などの知識から考察した解説も興味深かったです。2013/04/21
Nekono
11
夏向きに幽霊名画集(笑)カラーの幽霊画はさすがにゾクゾクきます。解説や幽霊画への考察、牡丹灯籠の背景や考証等も読み応えがあり、これ一冊あれば幽霊画の概略と鑑賞ができてしまいます。惜しむらくは文庫版である事。できれば大判で持っていたい。あっ、でも、それはかなり怖いかもしれない。2015/07/21
コーデ21
7
先月、はとバス「立体怪談ツアー」に参加^^ 全生庵の「幽霊画展」も観たので、その復習として。ただ、あまりに掲載内容が濃すぎて返却日までに読んだのは、ほんの数ページだけ(涙)先月、東洋大学の井上円了記念博物館に行ったばかりなので、辻惟雄氏の井上円了に関する記述には少々引っ掛かったし…確認のためにまた再読したいです♪2019/09/22
wknwkn
4
幕末から明治にかけて西洋文化の到来で非科学的な話が廃れていく中で、怪談話をやり続けた円朝の心意気に感動した。井上円了も妖怪学を確立した功績はあるけど、その立場は一歩引いていて、円朝はそれを否定するかのように怪談話を続けた。私は、幽霊を本当に恐れることは、その存在を敬う気持ちに通じるのではないかと思った。円朝はその気持ちを失って欲しくないと考えたのではないだろうか。そんな円朝の思いが、素晴らしい幽霊画のコレクションを構築させたのだと感じた。2015/08/28