内容説明
インド仏教の本流を汲むチベット密教は、解説への手段として、長らくタブー視されていた「性」まで取り込んだため、興味本位による憶測と恣意的な解釈が先行し、正確な教義や修行法が一般に伝えられることは不幸にして少なかった。しかし、その教えは今日、世界各地の新宗教、現代思想にまで多大な影響を与えている。本書では、その長い歴史と個性的な指導者たちの活動を紹介。さらに、正統派のゲルク派ほか諸派の教義や性的ヨーガを含む具体的な実践=修行法も解説し、チベット密教の本質とその奥にある叡智を明快に解き明かす。マンダラについての書下しを増補した決定版。
目次
第1部 歴史篇(チベット密教とはなにか;チベット密教の歴史;ツォンカパの生涯)
第2部 修行篇(ゲルク派の密教修行;秘密集会聖者流;カギュー派・サキャ派・ニンマ派の修行法)
補遺 チベット密教のマンダラ世界
著者等紹介
ツルティム・ケサン[ツルティムケサン][Tsultrim Kelsang]
白館戒雲。1942年西チベットのシェーカル生れ。インド、ヴァラナシー・サンスクリット大学大学院修了。現在、大谷大学名誉教授
正木晃[マサキアキラ]
1953年神奈川県生れ。筑波大学大学院博士課程修了。現在、慶應義塾大学非常勤講師。専門は宗教学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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nobi
50
歴史編と修行編からチベット密教の「立体的把握」を促す。特に「性」という領域に踏み込んだ後期密教について著者は「人間性の深淵に立脚した未知の叡智が潜んでいる」ようと。とは言え禅宗などに見る寂静の世界とは隔たった極彩色の世界を見るようだった。例えばチベット密教最大のゲルク派を開いたツォンカパが施したジョカン寺の釈迦像の装飾は過剰とも思える程きらびやか、彼の四十九ある修習次第には「性的ヨーガ」という言葉が九回現れる。また修行法は「空性の智」体験を超えて、ホトケの姿を観想し身体に風(ルン)を通す等多岐濃密具体的。2024/06/01
うちこ
5
チベット密教のいろんな宗派の流れ、主要人物のスタンスを知ることができます。 インドのハタ・ヨーガではクンダリニーの覚醒に主軸を置いて、根源的生命力とか宇宙との合一へ向かうエネルギーを重視していますが、チベット密教では絶えることなく相続してきた根源的な意識を探ろうとするスタンスが興味深いです。 極端さに走る人をスルーしながら自分の思想を打ち立て、社会と折り合っていく。そういう偉人の話が好きなので今回はサキャ・パンディタをきっかけに読みましたが、チベット密教ヨーガは奥行きだけでなく、触れ幅が大きいです。2017/08/19
ぞるば
3
難しかった。読み終えるまでに3年はかかってる。もうちょっと基礎知識がないと…。日本で思う仏教とはずいぶん違ってる。救われたいとかそういうことでなく、いかにして悟りを開くか。ものすごい良い頭でものすごく考えてる(ように思う)のに、結局体感するしかない、というのがすごい。巻末には文献の紹介があって、とても親切でした。2015/09/26
pyidesu
2
たしかに、性的ヨーガへの偏見が解けた。2025/04/29
?
2
チベット密教の入門書として手に取った。チベット密教といえば過激でグロテスクな(端的に言えば気持ち悪い)イメージだが、この本の語り口は淡白で堅実だった。実際、チベット密教については「性ヨーガ」をはじめセンセーショナルな側面ばかりが取り沙汰されがちだが、この本はそうした偏見を解消してくれるものだった。2019/02/14