内容説明
西南戦争後の夜空に出現した西郷星、ペスト大流行と鼠供養の塚、團十郎人気と贋者たち、焼芋と明治文学、白秋「東京景物詩」にみる瓦斯燈の詩情、落書きのため借家を追われた青木繁、コックリさんと小波お伽噺。サーカス、野球、人力車、競馬、水族館、赤帽、バナナ、半熟玉子、軽気球、凌雲閣、新聞広告など、九十七の主題によって明治を語り、懐古した本書は、その静かな滋味あふれる語り口で、偉人文人たちの逸話を披露しつつ、事物の考証を通して市井生活のささやかな詩情にも光を当てる。
目次
サーカス
ミラー公判
ポスト
野球
万年筆
西洋菓子
ペーパーナイフ
人力車
瓦斯
毛布〔ほか〕
著者等紹介
柴田宵曲[シバタショウキョク]
1897(明治30)年、東京市日本橋区の商家に生まれる。本名泰助。中学を中退後、上野図書館に通って独学で俳句、短歌、文章に精進。ホトトギス社に入社し編集に従事、寒川鼠骨に師事して『子規全集』編纂に尽力した。三田村鳶魚の著述にも協力。『蕉門の人々』『古句を観る』など、俳句に関する著作は高く評価された。晩年、書肆の求めに応じて『明治の話題』(ちくま学芸文庫)、『妖異博物館』正・続(ちくま文庫)などを著し、話題を呼んだ。1966(昭和41)年死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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きさらぎ
3
明治30年生、昭和41年没の俳人・文筆家で、『子規全集』の編纂などをした作者が、新聞に連載した随筆をまとめたもの。どれも3頁ほど、ゆったりとした語り口が快く、他の本を読む傍ら、空いた時間にちまちま読んだ。森銑三が序文で絶賛しているのだが、まあつまりはそういう本で、明治の文物を明治人がどのような感性で受けとめていたのか、近代文学や様々な逸話の中から拾い出し、作者自身の体験も交えつつ綴ってゆく。本書を読むと自分がどれだけ江戸明治の感性から遠いか思い知らされる。すごい本というか「参りました」という感じになった。2017/08/30