内容説明
古代インドの大叙事詩『マハーバーラタ』の中の一編で、同族同士が戦うことに深く悩み、戦意を喪失している勇士アルジュナへ、御者を務めていた賢者クリシュナ(実は最高神の化身)が、彼を鼓舞するために説いた教えが、バガヴァッド・ギーター(神の歌)である。人間存在のむなしさを描き、現世の義務をはたしつつ解脱に達する道を説く信仰の書をわかりやすく解き明かす。さらに帝釈天、弁才天、大黒天、毘沙門天、鬼子母神などのルーツを解説し、宗派を超えて愛誦されてきた最高聖典が、仏教や日本の宗教文化、日本人のものの考え方に与えた影響を明らかにする労作。
目次
日本に入ったヒンドゥー教の神々
ヒンドゥー教の聖典と『ギーター』
不滅の存在
平等の境地
絶対者に捧げる行為
祭祀のための行為と知識
行為の放擲と行為のヨーガ
生前の解脱
瞑想の実践
一切が平等
信仰者の種類〔ほか〕
著者等紹介
上村勝彦[カミムラカツヒコ]
1944年、東京浅草に生まれる。2003年、逝去。1967年、東京大学文学部卒業。1970年、同大学院人文科学研究科(印度哲学)修士課程修了。サンスクリット詩学専攻。元東京大学東洋文化研究所教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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にいたけ
47
そもそも原典は「マハーバーラタ」というインドの口承文芸。その物語中に出てくる戦闘部分が「バガヴァッド・ギーター」である。戦闘中にニュータイプの会話のような問答が繰り返し続く。入門編としては良いがツッコミが足りないかも。ブラフマン、アートマン、梵我一如とはどういうことか?踏み込んで欲しかった。体という入れ物の中に自分という意識があり、肉体を通して感じることに反応しないようにすれば悟りの境地に到れるという。 人に期待しない。過去の記憶と今を紐付けない。過去記憶が自分を苦しめる。そんなことを感じながら読んだ。2023/03/31
❁Lei❁
35
途中で挫折したのを一年半ぶりに再挑戦。『バガヴァッド・ギーター』はインドの叙事詩『マハーバーラタ』の中で、戦意喪失したアルジュナに対して説かれるクリシュナの教えです。幸も不幸も善悪も、生死でさえも平等に見ること。結果に執着せず社会的義務を果たすこと。そして最高神を信仰すること。そうすれば私たちは最高の境地に至る、つまり解脱できるのだそうです。そのための方法としては常識的なこともあれば実行に移すのが難しいこともありますが、この競争社会において『ギーター』の教えを知っておくだけでも救われると感じました。2021/09/28
南北
15
ヒンドゥー教の聖典である「バガヴァッド・ギーター」の訳者である著者が自ら解説したギーターの本です。ヒンドゥー教というと日本人にはあまり関係が少ないように思われますが、ヒンドゥー教の神々は仏教にも多く取り入れられていますし、大乗仏教の涅槃経や天台宗の本覚思想とも共通する教えが説かれています。いきなり「バガヴァッド・ギーター」から入るのではなく、本書を読んでから読んだ方が理解が深まるのではないかと思います。2018/11/15
Gokkey
11
バガヴァッドギーター一章に対して一章を当てる内容なので大変読みやすい。確かに現代を生きる我々にも響く言葉が沢山あり、読み継がれてきた理由も分かる。日本人にとっても比較的受け入れやすい考え方だと感じる文章が多いのは大乗仏教、とりわけ天台宗への影響ゆえか。日々の目の前の出来事に一喜一憂することなく、長い時間軸で生きるという行為の鳥瞰図を手に入れるきっかけになり得る。但し、他者やモノ、そして過去に依存せず、五感をコントロールして為すべき事に集中する強靭な精神を同時に求める旅でもある。2024/01/04
荒野の狼
11
ギーターを各章の重要な節を引用しながら解説。難解な章は省いてあり、すべての節が引用されているわけではないので、ギーターの全体を知るには上村勝彦による岩波文庫のギーターの全訳を読んだほうがよい。全訳版から入っても詳細な解説があり、内容の理解に予備知識は必要はない。この解説書の利点は、重要な思想だけを丁寧に仏教との関連も含めて解説している点で、数日あれば容易に読破できるところ。どちらか一冊というのであれば、概念を短い時間で習得したい人には本書を、全体をじっくり勉強したい人には全訳が薦められる。2011/02/01